[三菱鉛筆]「書く・描く」の価値を筆記具による表現からデジタル空間へと広げ、人と人がつながるための新たな体験の創出を目指す

 三菱鉛筆は、VRゲーム開発企業であるMyDearestと協業し、ソーシャルVRプラットフォームの「VRChat」において、「書く・描く」を中心とした新たな表現体験の研究開発を進めてきており、今回、実際の利用環境での検証を開始することを発表した。

 この「書く・描く」を中心とした新たな表現体験の研究開発では、筆記具を通じて得た同社の知見をデジタル空間へと拡張し、ユーザーからのフィードバックを得ながら、デジタルならではの表現体験の価値や事業化に向けた可能性を検証していくという。さらに、紙の上で長年培ってきた「書く・描く」の価値をデジタル空間へと広げることで、人々が自分らしさを表現しやすくし、その表現を通じて人と人がつながるための新たな体験の創出を目指すとしている。

 この研究の背景は、表現活動の場が紙やリアル空間にとどまることなく、デジタル空間へと広がっていることが挙げられる。同社ではこれまで、筆記具を通じて「書く・描く」という人々の表現をサポートしてきたが、一方でデジタル技術の発展により、自分らしさを表現する方法や創作活動の在り方も多様化していることもあり、この表現方法の変化を、新たな表現文化の可能性と捉え、「書く・描く」という行為がデジタル空間においてどのような価値を持ち得るのか、その探究を進めているという。

 VRChatをはじめとするソーシャルVRサービスでは、ユーザーがアバターやワールドの制作、コミュニケーションを通じて、自分らしさを表現する文化が広がりを見せており、その中でも、VRChatは世界のユーザーが集うソーシャルVRプラットフォームとなっている。2026年には最大同時接続者数(CCU)が15万人を超えるなど、活発なコミュニティーが形成されているということから、同社では、このVRChatに着目したという。VR空間には、「自分らしくありたい」「自分を表現したい」という根源的な欲求が存在する一方で、「書く・描く」を通じた表現活動の可能性は、まだ十分に開拓されているとはいえないと考える。

 今回の取り組みでは、その探究の対象を、「書く・描く」という行為がコミュニケーションの一つとして根付いているVRChatの空間へと広げものとしている。VR空間における体験設計やコミュニティー形成の知見を持つMyDearestと協業することで、デジタル空間における新たな表現体験の創出を目指している。

 この研究では、VRChatにおける筆記・描画体験ツールの開発を通じて、デジタル空間における新たな表現体験の可能性を探るもので、同社のアナログの知見を生かして、筆記時の感覚や描線表現の再現にこだわったデジタルの開発を進めている。VR空間ではこれまでも文字や絵を描くことは可能だったものの、多くは均一な線による表現が中心となっていた。この研究においては、鉛筆ならではの濃淡を伴う描線表現に着目し、鉛筆の筆記感や豊富な表現性をデジタル空間で実現することを目指しているという。

 単にVR空間で文字や絵を描けるようにするだけではなく、「書く・描く」という行為そのものが持つ楽しさや心地よさ、人とつながるきっかけとしての価値を、VR空間の中でどのように実現できるかを探究するとしている。また、ユーザーとの対話や体験イベントの開催を通じて、VR空間ならではの表現活動やコミュニティー形成の可能性についても検証を進めるとしており、今後はユーザーからのフィードバックを取り入れながら改善を重ね、新たな表現体験の価値を探究していくという。

 現在は、試作・検証段階にあり、市場やユーザーのニーズ、技術的な可能性について検討を進めている段階で、今後はVRChat上での体験会やイベントの開催などを通じて、ユーザーからのフィードバックを基に改善を重ねていき、デジタル空間における「書く・描く」の価値について検証を進めていくとのこと。こうした取り組みを通じて得られた知見を活用し、デジタル時代における新たな表現体験の創出と事業化の可能性を探究し、将来的には、アナログとデジタル、それぞれの特性を生かした表現体験の実現を目指すとしている。

編集部員のひとり言

 筆記具メーカーが、いよいよデジタルへの取り組みを本格化したという今回のニュースは、とても興味深い内容だった。メタバース元年と言われた2022年、あれから4年が経過したが、着々といろいろなことが様変わりしてきていると感じる。例えば、チャットGPTもそうだが、AIの存在が驚くべきスピードで、我々の生活に入り込んできている。それどころか、ビジネスシーンいおいても、AIを活用した業務効率化が必須になりつつあるなど、デジタルへの移行が凄まじいスピードで進行していると感じる。ネットの世界も、AIによる映像の作成など、目を疑うほどのクオリティで作られているのを見ると、驚きの中にも、虚しさも感じる。ただ、今回の取り組みは、アナログとデジタルの融合なので、デジタルの世界でも、アナログの感覚を残せるというのは、アナログ世代の人にとっては、ありがたいことだし、デジタル世代の人にとっては、新鮮なことになるだろう。こういう研究について、今後もっと多くの人が体験できる公の場があることを望むばかりだ。

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