「レビュー」リチウムイオンはもう古い!? 半固体電池を搭載したポータブル電源を試してみた(前編)
2023年10月10日、ソーラーパネルやポータブル電源、車載用冷蔵庫などを手掛ける「BougeRV(ボージアールブイ)」(中国)からポータブル電源の新モデルとして「BougeRV(ボージ アールブイ) Rover2000」が発売された。本製品は、半固体電池を搭載したポータブル電源で、リチウムイオンやニッケル、マンガン、コバルトなど液体電池に比べて発火や爆発の危険性が軽減できる電池を採用しているのが特徴のモデルとなっている。また、半固体電池を採用することによって、同レベルの製品と比較しても約25%程度コンパクト化を実現しており、高い出力を可能にしたモデルにありがちな大きな筐体とは違い、一回り小さいコンパクトさを実現させている。今回は、ポータブル電源ではまだ実装が少ない半固体電池を搭載した本製品を実際に試す機会を得たので、その使い勝手を特徴とともに前編と後編でお伝えしていきたいと思う。
BougeRVについて
BougeRVは、2017年に中国で創業した蓄電池などを開発する会社で、日本では、2022年6月にBougeRV Japanとしてソーラーパネルやポータブル冷蔵庫、ポータブル電源および関連するアクセサリー部品などの販売を手掛けている。
JP.BougeRV.com
「BougeRV Rover2000」の特徴について
今回発売された新モデル「BougeRV Rover2000」は、電源に半固体電池を採用したモデルで、これまでのリチウムイオン電池やニッケル、マンガンといった熱や衝撃によって可燃する可能性の高い三元系モデルとは一線を画す。半固体電池を搭載したことにより発熱を抑えて発火や爆発の危険性が低いことも実証実験で証明されており、長寿命かつ安全性の高いモデルになっている。
また、電池容量は2008Whで、最大出力は2200W(最大瞬間4000W)とパワフルなモデルでありながら、同等レベルのモデルと比べてもコンパクトで軽量なモデルに仕上がっている。単体で2200Wもの出力を可能にしながら、本製品を複数台(最大3台まで)連結させることが可能となっており、最大で8kwhまで対応するなど、拡張性にも優れている。
デバイスを同時に最大14台も充電できる!
本製品は、2008Whもの大容量バッテリーと最大出力2200W(最大瞬間4000W/3秒間)もの高出力を備えている。そのため電力消費が高い炊飯器(1200W)なら約1.4時間、100W程度のテレビ(32~42インチ程度)であれば約16時間、120W程度の冷蔵庫(270L/2人暮らし用程度)であれば約13.5時間の運転が可能で、緊急時の非常用電源としても十分に使用することができる。また、出力ポートもAC、USBほか14もの出力ポートを装備することで、デバイスを同時に14台まで充電することができる。
半固体電池って何?
ここで、本製品の最大の特徴ともいえる搭載バッテリーについて説明したいと思う。本製品には、ポータブル電源では珍しく半固体電池を搭載しているのだが、そもそも半固体電池とはいったいどんなものなのだろうか。半固体電池とは、液体、固体のどちらでもないその中間的な状態であるゲル状の材料を電解質として利用する新しい形態の電池技術で、液体電解質を用いるリチウムイオン二次電池の優れた部分である、大容量・高出力を担保しながら、液体電池のネガティブな部分を取り除いて、安全性を高めた電池となっている。また、半固体電池は、環境に有害な有機溶剤を使用していないため、従来のバッテリーよりも環境にやさしいのも特徴の一つだ。
リチウムイオン電池との違い
多くのバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、電解液(気化性アルコール)の使用により、エネルギー密度が高く、軽量なのに大容量というのが特徴。スマートフォンやノートパソコンなどに使用されている。しかし、温度変化に弱く、寒い場所では、寿命が短くなる傾向にある。スマートフォンがスキー場など寒い場所ではバッテリーの減りが早いのはそのためだ。また、液体系なので熱や衝撃に弱く、発火や爆発など危険も潜んでいる。
しかし半固体電池では特殊なポリエーテル素材に電解液をゲル化させたものを使用している。ゲル化した状態でもイオン伝導率が保てるためリチウムイオンの容量を保ちながらも気化を抑えることで安全性に優れた電池となっている。熱による膨張や発火、爆発などの危険性は極めて低く、40℃の灼熱環境から-20℃の極寒環境でも性能が落ちることはほとんどない。充放電を繰り返しても性能面の低下は低く、リチウムイオン電池と比べても電池寿命が長いのが特徴だ。