〈レビュー〉ASUS初の「Copilot+ PC」を使ってみた!パフォーマンスに優れた、AI時代のスタンダードといえるノートPCは完成度が高かった

今回のレビュー記事では、ASUS(エイスース)のノートパソコンを取り上げてみたい。レビューするモデルは、Vivobookシリーズの新モデルとなる「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」で、Qualcomm(クアルコム)の Snapdragon X Elite (スナップドラゴン・エックス・ エリート)プロセッサを搭載した 「Copilot+(コパイロットプラス) PC」に準拠した初のノートPCだ。Snapdragonというと、イメージとしてはモバイル関連製品に使用されるCPUといった印象があるが、今年の4月にはPC用として「Snapdragon X Plus」を発表するなど、「Snapdragon X」シリーズに少なからず期待するところもある。今回のモデルにも「Snapdragon X」シリーズの「Elite」を搭載していることもあり、一体どんなものなのか、本製品の使い勝手なども交えながらお伝えできればと思う。それでは、本編をどうぞ!

目次

ASUSについて

ASUSは、1989年台湾で設立された、PCおよびスマートフォン、PC向けの周辺機器などの製造、販売を行うメーカーだ。ノートPCのZen BookシリーズやスマートフォンのZen Foneシリーズをはじめ、最近では、ゲーミングPCであるROGシリーズなど、コストパフォーマンスに優れたモデルを多数リリースするなど、ラインアップの豊富さには定評がある。ブランド名は、Pegasus(ペガサス)に由来し、「すべての製品に高い品質と独創性を吹き込むことにより、機知に富むペガサスが象徴する強さ、創造性、純粋さを具体的に実現する」という意味が込められ、Pegasusの最後の4文字"asus"から名付けられている。

今回試した製品について

「ASUS Vivobook S 15 S5507QA 」は、ASUS JAPAN が2024年5月21日に国内投入を発表し、6月18日に発売を開始したモデル。昨年QualcommがWindowsノートパソコン向けに発表したAI処理に特化したプロセッサ"Qualcomm Hexagon(ヘキサゴン) NPU(Neural network Processing Unit)"を備える新しい"ARM"ベースのチップセット"Snapdragon X Elite"を搭載し、Microsoftの"Copilot AI"機能が統合された、Microsoft初認定の「 Copilot+ PC」 Windows ノートパソコンだ。

PC本体、電源アダプター、簡易的なマニュアルが付属する

簡単ではあるが、一通り説明したところで、次の章からは、実際に使用してみた感想をお伝えすることにしよう。

実際に使用してみる

全体のデザインは、シンプルな印象を受ける。アルミニウムが採用されたボディは、マットシルバーで仕上げられており高級感を醸し出している。天板は、凹凸もなくフラットに仕上げられており、"ASUS VIVOBOOK"のロゴがさりげなく刻まれるなど、全体的にまとまりのある仕上がりに感じる。

キレイなディスプレイ、15.6インチサイズでありながら薄型で軽量

15.6インチという画面サイズを有しながら、重さは、わずか1.42kgとなっており、14インチサイズクラス相当の重さに収めているので、持ち運びが多いユーザーにはうれしいポイントといえるだろう。

側面に装備されたインタフェースは、左側面に、HDMIポート、USB Type-Cポート(USB4/Power Delivery対応)×2、microSDXCカードスロット、3.5mm オーディオジャックが用意され、右側面にはUSB Type-A(USB 3.2 Gen 1)ポート×2が配置されている。通信規格は、Bluetooth5.4に準拠し、最新のWi-Fi 7に対応するなど高速の無線接続が可能となっている。

左側面には、HDMI、USB Type-C、microSDXCカードスロット、3.5mm オーディオジャックと充実
右側面には、USB Type-A端子が備わる


AI 機能の搭載も特徴の一つだが、新しい"Snapdragon X Elite"プロセッサの採用で機能と性能はもちろん、バッテリー駆動時間を公称値で18時間とするなど、長時間の使用を実現したのも特徴の一つだ。また、高速充電にも対応しており、49分の充電時間で容量の60%まで充電することが可能となっている。なお、MIL-STD 810Hに準拠し堅牢性を備えているのも、日常で安心して使用することができるポイントとなっている。

キーボードとテンキー

本製品のキーボードサイズは、318×100mmで、キーピッチは19.9mmとしっかりと確保されており、エンターキーのサイズも大きめになっているので、とても使いやすい。しかし、エンターキー周辺のキー配列は凝縮されている印象で、テンキーにおいてはやや小さめなサイズになっていることから補助的なものとして考えた方がよさそうだ。

キーボードのタテサイズは100mm
キーボードのヨコサイズは318mm

キーの打鍵感は、適切なストローク量に設定されているからなのだろう、スムーズに入力できるといった印象で、キータッチがとても心地よく感じられる。ちなみに、本機には Microsoft Copilot の専用キーが備わっており、この専用キーを押すことで"Copilot AI"が起動する。これは、Microsoft認定の "Copilot+ PC"である、 「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」ならではだ。また、キーボードはシングルゾーン RGBバックライトキーボードとなっており、暗所で使用するには重宝する仕様となっている。設定は、Windowsの設定やMyASUSアプリを使用することで、バックライトの色や点灯パターンを変更することが可能なので、好みや気分に応じて設定を変えてみたりすることもできる。

タッチパッドも大きめのサイズ(130×85mm実測)となっており、上と左右の3辺を指でスライドするとショートカットとして機能させることができる。このショートカットはとても便利で、タッチパッドの左辺を縦方向へ上下にスライドさせると音量の増減ができ、右辺を縦方向へ上下にスライドさせると画面の明るさを変更させることが可能だ。上辺を左右にスライドすることで、音楽や動画を巻き戻し/早送りをすることもできるのでコンテンツの再生時には便利に使うことができそうだ。

タッチパッドのヨコサイズは130mm
タッチパッドのタテサイズは85mm
タッチパッドをスライドさせることで音量や輝度などの調整ができる

ディスプレイ

ディスプレイには、15.6インチ OLED(タッチ操作は非対応)、120Hzリフレッシュレートに対応した 2880×1620の高解像度ディスプレイが搭載され、DCI-P3 100% の色域をカバー、応答速度は0.2ms。色味や視野角の広さなどに特に不満はなく、画像の補正などにも使えそうだ。明るさも600ニトあるので必要十分で、問題なく使用できる。また、ブルーライトの放出量が液晶ディスプレイよりも約70%も少ないため、長時間の使用でも目に負担が少ないので安心だ。ディスプレイは、180度まで開くことができるので、画面を上に向けたフラットな状態で使用すれば、対面での情報共有をすることもできる。もちろん、視力や作業内容にあわせて解像度の変更も可能だ。デフォルトの解像度では、200%に拡大表示(実質1440×810)となっているため、フルHD(1920×1080)で使用する場合は、設定から拡大を150%に変更する必要がある。

ディスプレイは180度開くので、対面で情報共有することもできる

全体のスペック

ここで改めて"Copilot+ PC"について触れておきたい。"Copilot+ PC"とは、マイクロソフトが提唱する"AI PC"の新基準で、準拠するための条件としては、Microsoftが承認したCPUまたはSoCを搭載、1秒あたり40兆回以上の演算を実行できる"40TOPS"以上のNPUの搭載、メモリーは16GB(DDR5/LPDDR5)以上、ストレージ容量は256GB以上などのがあげられる。

マイクロソフトがアナウンスする"Copilot+ PC"の条件

「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」は、CPUにQualcomm Snapdragon X Elite、NPUにQualcomm Hexagon NPU(45TOPS)を搭載し、メモリーは標準で32GB、ストレージ容量は1TBのSSDを採用するなど、"Copilot+ PC"としての基準をクリアしている。そのほかのスペックも充実しており、WindowsノートPCとしても十分以上だ。

ASUS Vivobook S 15 S5507QA のスペックまとめ

スペックは、最新ノートパソコンにふさわしい内容といえるだろう

パフォーマンス

実際に当サイトの記事を作成しながらの使用感にはなるが、Chromeブラウザをベースに作業を行い、Googleドキュメント、スプレッドシートなどを使い、資料の検索、Gmailなどタブを20個程度開いておいても、安定して動作しており、作業していてもストレスもなく不満もほぼゼロ、タブの切り替えもスムーズで快適だった。コンテンツ再生もHarman Kardonのサウンドシステムを採用していることもあり、流れてくるサウンドには厚みがありパワフルに感じられた。本体からの排熱についても、底面がほんのりあたたかくなる程度で、ファンが回るような熱さになることはなかった。

気になるバッテリー駆動時間についても、筆者の使い方では1時間あたり8%〜12%程度の消費だったので、フル充電の状態からだと8〜12時間は使用できる計算だ。12時間近くも使用可能な"Snapdragon X Elite"の「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」は非常に優秀だといえるだろう。これなら、外出に持ち出して移動先で長時間使用しても安心して作業を行うことができそうだ。

その一方で、"Snapdragon X Elite"プロセッサは、ARMベースであるがゆえに、対応するアプリケーションに未対応のものがあることは知っておきたい。アプリやサービスの今後の対応次第ではあるが、よく使われているアプリでも動作しないこともあるので、あらかじめ調べておく必要がある。使っているアプリ次第ではまだ "Snapdragon X Elite"搭載デバイスは、ユーザー環境によっては時期尚早かもしれない。このあたりについては、アプリ開発やサービス提供者の対応する時間が必要なところだ。

また、"Snapdragon X Elite"にも搭載されている AI 機能などに最適化された "NPU" は、現状では実用するサービスやアプリがかなり限定されており、"NPU"を活かす機会は少ないかもしれないところだが、「 Copilot+ PC」 として、Snapdragon X Elite を搭載する本機は性能とバッテリー駆動時間のパフォーマンスに優れていることは間違いなく、これだけでも検討する価値はあるといえるだろう。

ココが気になった

ASUS の日本語配列は慣れが必要

限られたスペースに配置されたキーボードは、テンキーが装備されていることによって、ギュッと左右に凝縮されているので、タイピング中に誤ってテンキーに触れてしまうことがあった。テンキーがあることによって数字入力の効率はアップするものの、やはり、ミスタッチを避けるためには注意することが必要だろう。もう少しテンキーとの間隔があればと思うところはあった。また、シルバーのキートップに刻まれるフォントの細さも気になった。キー配列に慣れていないこともあるのだが、パッと見たときの視認性はあまりよくないという印象をうけるので、もう少し太めのフォントのほうが視認性が高まり、入力インターフェイスとしては好ましいと感じた。

まとめ

ASUS から初めて"Snapdragon X Elite"プロセッサ搭載機としてリリースされた「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」は、Windows PCにプラスして様々なAI機能が利用できるのが特徴。性能とバッテリー駆動時間のバランスを高い次元で両立させており、テンキー付きで持ち運べる Windowsノートパソコンを求めているユーザーにはおすすめできる。

現時点で「Copilot AI」 機能に関しては、サービスローンチが間もないこともあり、Microsoft側の調整やアプリやサービスの対応が限定されるので、まだ物足りない感はあるものの、この点については、時間が経てば自然と解決されていくだろう。そして、"Snapdragon X Elite"搭載ということで、アプリの互換性は気になるところだが、"AI PC"の利便性をできるだけ早く体感したいのであれば、「Copilot+ PC」対応の本機は魅力的なマシンといえる。
15.6インチOLED、32GBメモリと1TB SSDストレージモデルを搭載した完成度の高いコストパフォーマンスに優れたマシンには変わりはない。15.6インチディスプレイでテンキーを搭載しているノートPCを求めているユーザーにとって、重さ約1.42kgで軽量かつ薄型で、バッテリー駆動時間も優れている本モデルは、検討するに十分なモデルにふさわしいだろう。

●ASUS 公式サイト:「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」製品紹介サイト

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