〈レビュー〉これはいいっ!nwmのオープンイヤーヘッドホンを使ってみたらその質の高さに誰もが驚嘆するはず

今回レビューしたのは、NTTソノリティから、2024年7月に発売された"オープンイヤー型オーバーヘッド耳スピーカー"「nwm ONE(ヌーム ワン)」だ。
耳をふさがずに使用するため、周囲の音と共存しながら音楽などを楽しめる「ながら聴き」に対応したオープンイヤー型は、急速にその認知度を高めている。オープンイヤー型の多くは、耳にかけて使用するスタイルの製品が多く、気軽に使用することができることから人気が高まっている。一方でそのサイズ的な制約もあり、サウンドクオリティには限界があったのは否めないところではあった。
その限界を超えるべくNTTソノリティが提案したのが、オーバーヘッド型というスタイルだった。発表会に参加し、その後のタッチ&トライで聴こえてきたサウンドには、驚きを超え、感動さえ覚えるほどだった。だからこそ、このモデルが日常使いでどのようなサウンドを奏でるのかが気になるところでもあり、今回レビューするに至った。しばらくの間使用してみたので、感想を交えながらレビューしてみたいと思う。

目次

NTTソノリティについて

NTTソノリティは、最先端の音響信号処理技術を用いて音響関連事業を行う企業として2021年に設立。独自の「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)技術」をはじめ、必要な音だけクリアに取り出す「Magic Focus Voice(マジックフォーカスボイス)」を組み合わせながら、ビジネスやプライベートなどのさまざまなシーンにおいて、快適な音響空間を実現する製品やサービスを提供している。没入ではなく「共存(Co-being)」をコンセプトにした製品を展開するNTTグループ初の音響ブランド「nwm(ヌーム)」を立ち上げ、展開をしている

「nwm(ヌーム)」について

「nwm」は、独自技術のPSZをコアにしたコンシューマー向け音響ブランドで、没入感ではなく、みんなとつながる気持ちよさを追求するために作られたブランド。PSZ技術を搭載したイヤホンは、耳を塞がない、そして音漏れも気にならない、まるでスピーカーが耳元にあるかのような感じの新しいタイプのイヤホンとして、耳スピーカー、いわゆる「耳スピ」シリーズを展開。大好きな音も、大切な音ともつながれる「耳スピ」シリーズには、完全ワイヤレスモデルとネックバンド型、有線モデルをラインアップするほか、今回、オーバーヘッドタイプの製品をラインアップに加え、オープンイヤーヘッドホンの新たな世界観を打ち出している

今回試した製品について

「nwm ONE」は、オーバーヘッド型のオープンイヤーヘッドホンで、ブランド初となる、音を操るコア技術「PSZ技術」と「Magic Focus Voice」のいずれも搭載したオーバーヘッドタイプの製品だ。オープンイヤー型でありながら「PSZ技術」で音漏れを抑制しつつ、通話で使用する際には「Magic Focus Voice」によって、必要な音と不要な音を仕分けて必要な声だけをクリアに届けることができる。また、今回のモデルには、新たに開発された2wayドライバーも搭載。中高域用として直径12mmのツイータードライバーと、低域用として直径35mmのウーファードライバーによって、圧倒的で開放感のあるサウンドを実現している。そのほか’、360 Reality Audioや、次世代Bluetooth規格LE Audio/Auracast、さらにはマルチポイントにも対応するほか、接続方法はBluetoothによるワイヤレス接続、USB Type-CケーブルによるUSBオーディオ接続に対応するなど、これまでにないタイプのモデルに仕上げられている。

実際に使ってみた!

SDGsを意識したパッケージング

製品パッケージは、SDGsを意識したシンプルなパッケージ。開封すると、「nwm ONE」の製品アウトラインに沿って形取られ、再生紙で作られたケースが現れる。ケースを1周するように巻かれたパッケージにも紙を使用しており、そのストッパーには接着材ではなく紙の切り欠きを利用して止めているあたり、SDGsをかなり意識しているかのようなこだわりを感じる。ちなみに、巻かれているパッケージはそれ自体が製品マニュアルとなっており、ミニマムにもこだわっているという印象だ。同梱されているのは、USB Type-Cケーブル1.2mのみとなる。

ケースに収められた「nwm ONE」とUSB Type-Cケーブル。製品マニュアルはケースに巻かれている

「nwm ONE」のディティール

オーバーヘッド型のオープンイヤーヘッドホン「nwm ONE」はヘッドホンではなく「オーバーヘッド耳スピーカー」と呼ばれており、まるでスケルトンのヘッドホンのように見える個性的なスタイリング。オーバーヘッド耳スピーカーだからこそ実現できたデザインだと言える。デュアル・ループデザインと呼ばれているデザインは、ヘッドバンドと2つのループで構成され、ループにはイヤーパッドと中心部には2wayドライバーが備わっていることが特徴となっている。装着時には、耳の横でドライバー部分がまるで浮いているかのような状態で、周囲の音もそのまま聞こえる構造となっている。ひと目でわかる独自スタイルも本製品のポイントといえる部分だ。

ヘッドバンド部分は細めでシンプル。頭部に触れる部分は、シリコンラバーを採用しているので、バンドの劣化を気にすることなく使用できそうな印象だ。ヘッドバンドは無段階調節が可能で、内側にLR表記がされている。表記は本体とほぼ同色でされており、表記にまでもミニマムデザインを徹底させるこだわりが感じられる。左側ハウジングの下には、操作ボタンやUSBケーブルの差込口が配置されており、操作ボタンは上側に電源ボタン、下側にコントロール用の音量ボタンが配置されている。一方、右側ハウジングはプレーンな状態となっている。そのほか左右のハウジング共通でスリットが3か所ずつ設けられている。

「nwm ONE」の特徴であるデュアルループ・デザイン。ヘッドバンド部、イヤーカップ部はシリコンラバーを採用している
L側ハウジングは、スリットとコントロールボタンを設置
R側ハウジングは、スリットのみが設けられている

搭載する2wayドライバーは、オープンイヤータイプの苦手とする音域の表現不足を補うために、低域用に35mmウーファードライバー、中高域用に12mmツイータードライバーをそれぞれ搭載し、2つのドライバーを別々のアンプで駆動させることで克服している。

ハウジングにには、ドライバー部品が最適化されて収められている

オープンイヤーヘッドホンの場合、音量を上げるにつれ"音漏れ"が発生するという悩みを抱えることになる傾向が強いが、「nwm ONE」では、PSZ技術を搭載することでその悩みを解消している。「PSZ」技術について簡単に説明すると、ドライバーユニットから漏れ出る音に対して、左右のドライバーユニットに設けられたスリットから逆位相の音を出力することで、音を閉じ込めて漏れ出る音を打ち消すといった仕組みだ。

イヤーパッドもヘッドバンド同様、肌に触れる部分には、シリコンラバーが採用されている。肌に直接触れる部分がシリコンラバーになっていることから、長期間使用してもポリウレタンのように痛むことがなく使用できそうな印象だ。ドライバー部は2段階から調整できるようになっており、ユーザーの耳に合わせて可動させることができる。ステンレス製のスピーカーグリルはドライバーからの音を効率的に届けられるよう網状になっており、このグリルもしっかりと考えられてデザインされているあたりは、同社のミニマルデザインを意識するこだわりと音作りに対する自信が感じられる。 

通話用のマイクも内蔵され、ペアリングしたスマートフォンでの通話や、PCを使用したオンラインミーティングなどにも対応する。内蔵されているマイクに向かって発話すれば、周囲のノイズを消しながら、クリアな音を受話者に届けることができる「Magic Focus Voice」が搭載されているのも「nwm ONE」の特徴となっている。

PSZ技術とは

「PSZ技術」は、ある音波に対して180度位相を回転させた逆位相の波形を重ねると音が消える原理を応用した"音を閉じ込める" 技術。これによって耳を塞がないタイプのイヤホンやヘッドホンでも、音漏れを気にすることなく音楽が聴ける “ながら聴き”スタイル を実現している。

Magic Focus Voiceとは

「Magic Focus Voice」は、音が2つのマイクに到達する時間差から音響空間を認識して話者を特定する「ビームフォーミング」と、雑音を除去して音声だけを抽出する「スペクトルフィルター」の2つをハイブリッド処理する"音を仕分ける" 技術。長年電話に取り組んできたNTTならではと言える技術でノウハウを凝縮させ、音質を損なうことなく人の耳に合わせるチューニングを実現させたもの。

いよいよ試聴開始! 軽快で、開放的な装着感

185gという重さと見た目の軽快さもあり、装着感は良好。装着時の側圧は軽めで長時間装着していても圧迫されるといったことを感じることはなかった。耳にかぶせて使用するオーバーヘッドタイプでありながら、オープンタイプということもありとても開放的な印象だ。オープンタイプの特徴でありメリットでもある、通気性は良好で耳のまわりの蒸れもほぼ皆無といったところだ。シリコンラバーのイヤーパッドのおかげで、使用後の皮脂汚れに対してもサッと拭き取る程度のケアを行えば十分だと感じた。操作ボタンの位置も左側ドライバー部分に集約されているので操作に迷うことはない。

L側
R側

これはスゴい! オープンイヤー型とは思えないサウンド

ドライバー部分が耳穴に向かうようヘッドバンドで高さ、ドライバーを軽くひねって角度を耳穴に正対するように調整してから使用する。屋内にてBluetooth接続での試聴を行った第一印象は、素直なサウンドであったこと。まずは、アプリをインストールしない状態で聴き始めてみたのだが、低域も十分に感じられ、音楽を聴いていて心地がよく、穏やかな気持ちで聴き入ることができる。全体的なサウンドの傾向としては、曲の持つ情報を低域から高域まで、そのまま再生するニュートラルな特性だと感じた。また、音像もしっかりと表現する力も優れており、音場やサウンドの表現力はオープンイヤータイプと思えないほど充実している。

「nwm ONE」が奏でるサウンドは、全ての音域にわたってリッチに感じる。2wayドライバーということもあり、音域が広いクラシックのようなジャンルでも、美しい音を鳴り響かせてくれる。ジャズやポップスのようなメリハリある楽曲では、オープンイヤーであることを感じさせない、低域から高域までのサウンドをしっかりと再生してくれた。また、ビートの効いたダンス系のサウンドでは、軸となる低域をしっかり響かせながらサウンドを楽しめたのには、驚くばかり!中高域、低域用ドライバーが専用に用意された効果を実感することができ、オープンイヤー型とは思えぬサウンド表現力だと感じる。音質的に不利なオープンタイプでありながら、ここまで再現できるとは…正直驚きだ。これならどの音楽ジャンルでも、バランスよくまとまったサウンドが楽しめそうな印象を受けた。

また、スマホ用アプリ「nwm Connect」をインストールして"パラメトリックイコライザ"を使用することで、あらかじめ用意されている、6つのプリセットイコライジング(Balanced、More Bass、More treble、Clear voice、Dynamic、カスタム)が選択することが可能となる。音楽のジャンルにあわせてユーザー好みのプリセットを選択するだけで「nwm ONE」で再生することが可能になる。"カスタム"を選択すれば、ユーザーの好みに合わせたイコライジングもリニアに行えるので、音質の調整面では「nwm ONE」のポテンシャルを十分に発揮することができる。さらに、低域を増幅させたいなら"More Bass"を選択することで、低域を強調して楽しむことができるほか、全域にわたってサウンドに厚みを加えたいなら、"Dynamic"を選択すればサウンドの表情を一気に変化させることが可能となっている。

「nwm Connect」を使用することで、設定などをカスタムできる
指先でリニアに操作できるイコライザー

気になる音漏れはどう?

オープンイヤー型で心配される音漏れについては、音量を過度に上げて聴いても、うっすらと音が漏れる程度だから通常の音量で聴く程度なら全く問題ないだろう。程よい音量で聴きながら、周囲にいる人にリアルタイムで音漏れについて確認してみるも、音が漏れていることがわからない様子で指摘されることもなかった。また、再生中に「nwm ONE」を頭から取り外して自身で音漏れ具合を確認してみたものの、ほとんど気がつかないレベルだった。音漏れをコントロールするPSZ技術には、驚くばかりだ。

内蔵されているハンズフリー通話用のマイクを使用すれば、オンライン・ミーティングでの使用やスマートフォンでの通話にも対応している点も見逃せない。実際に屋外からの通話で使用してみたところ、周囲のノイズも消されて通話ができていたようで、その効果と通話品質にも目を見張るものがあった。

バッテリーの持ち時間も約20時間で、仮に1日に4時間使用したとしても5日間は使用できる計算だから必要十分で、もしものバッテリー切れにも5分の充電で約1時間の再生が可能な急速充電もサポートしているから安心して使用することができるだろう。

ここが気になった

身につけて使用している時は全く気にも留めていなかったことなのだが、外に持ち出したいと思った時にふと感じたことが、安心して収納できるケースが欲しいと思ったことだった。「nwm ONE」は、ドライバーが露出していることもあり、収納袋に収めてカバンに入れて持ち運んだとしても、もしもの時には傷まないかが気になるところ。製品が収納されていたパッケージを、ケースとして使い続けるのもアリだとは思うのだが、やはり製品を保護するためにも専用のソフトケースなどがあれば安心して持ち運ぶことができるうえ、収納して保管する時にも心強いところだ。

まとめ

オープンイヤーの印象が変わる!オススメの「オーバーヘッド耳スピーカー」

「nwm ONE」は、オープンイヤー型らしからぬ、鳴りの素直さと優れたサウンド再生力を持ち、開放感あふれる快適な装着感、周囲の音と「共存」しながら、音を聴くことを可能にしたヘッドホンだ。この感覚は独特で、オンリーワンだといえるだろう。その仕上がりは、間違いなく新世代のオープンタイプヘッドホンのベンチマークとなる製品で、今、聴いておくべきヘッドホンのひとつだといえるところだ。アプリ「nwm Connect」の完成度も高く、コントロールアサインの設定を好みの設定へ変更できるカスタム対応や、アプリを使用した"パラメトリックイコライザ"の操作も優れているので、サウンド面では、本製品のポテンシャルを十分に引き出すことも可能だ。密閉型ヘッドホンに勝るとも劣らないサウンドは、「オーバーヘッド耳スピーカー」の可能性を知らしめる"nwm"のフラグシップにふさわしく、マスターピースとして使用したい製品だと感じた。次作の「オーバーヘッド耳スピーカー」は、このサウンドクオリティを引き継ぎながら、よりコンパクトで気軽に持ち運べるような製品が登場することに期待したいところだ。

●nwm:「nwm ONE」製品紹介ページ

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