〈レビュー〉約8年半ぶりに発売!Beatsのワイヤレス・ポータブルスピーカーを使ってみた。単体、2台接続でも"Beatsサウンド"が楽しめる

今回のレビュー記事では約8年半ぶりに発売された"Beats“のワイヤレス・ポータブルスピーカーを試してみたいと思う。レビューする「Beats Pill(ビーツ ピル)」は、洗練されたデザインと独自のサウンドエンジニアリングで注目されているモデルだ。また、"Beats"といえば、低音域のサウンドを得意としているようなイメージがあるが、久しぶりに"Beats"から発売されたスピーカーがどのようなサウンドを奏でてくれるのか、とても気になるところだ。そして、実際の製品クオリティは如何ほどのものなのか、使用感を交えながらチェックをしてみたいと思う。では、本編にいってみよう!

目次

Beatsについて

「Beats by Dr. Dre(Beats)」はDr. Dre(ドクター・ドレ)とJimmy Iovine(ジミー・アイオヴィン)によって2006年に設立されたアメリカのオーディオブランド。2014年からApple(アップル)傘下のブランドとなっている。同社はコンセプトに「音に込められたすべてを伝えるために」を掲げ、高品質なヘッドフォン、イヤフォン、スピーカーを通して、音楽体験の新時代を目指すとして、レコーディングスタジオの臨場感とエネルギー、心を揺さぶるサウンドが伝わる製品を送り出している。また、デザイン性についても評価は高く、ひと目で"Beats"とわかるデザインや、豊富なカラーバリエーションで、世界中の多くのミュージシャンをはじめ、アスリートにも愛用されていることでも知られている。

今回試した製品について

「Beats Pill」は、デザインのアップデートをはじめ、新設計されたスピーカーユニットを搭載するなど、「Beats Pill+(ビーツピルプラス)」の発売以来、約8年半ぶりに発売されたワイヤレス・ポータブルスピーカー。充電・給電に対応するUSB Type-C端子を備え、モバイルバッテリーとしても使えるほか、有線接続を行うことでロスレスオーディオにも対応する。また、取り外し可能なストラップの採用で携帯性が向上したほか、 IP67等級の防塵・耐水性能や最大24時間再生が可能なバッテリーを採用するなど、パワフルなサウンドを実現させながら、使い勝手を従来モデルから大幅にアップグレードさせているモデルだ。

実際に使用してみる

製品を取り出すと、思いのほか重さが感じられる。本体のほかに同梱品としてUSB Type-Cケーブル、イヤープラグ、製品マニュアルとステッカーが用意される。

本体は「Pill」という名のとおり「薬のカプセル剤」を連想させる丸みを帯びた形状のデザインで、手に取ってみてもしっくりとなじむ形状で、サイズの割にはコンパクトに感じられるところに好感が持てる。四角い横長の形状をしているワイヤレス・ポータブルスピーカー製品が多いなか、このデザインからは個性が感じられる。

本体上部には、4つのコントロールボタンが設置されており 、直感的な操作が行えるようにデザインされている。デバイスのペアリングや、電源のオン・オフの切り替え、音楽の再生や音量調整などの操作が、迷うことなく行えるようになっている。

上部には、4つのボタン用意されている

どのようなサウンドなのか

電源を入れると、低音域が強調された起動音で立ち上がったことを知らせてくれる。早速スマートフォン(手持ちのiPhone)とのペアリングに取りかかると、Bluetoothの設定画面を開くことなく、iPhoneの画面に「Beats Pill」が見つかったという表示がされあっさりとペアリングが完了。Apple傘下になっていることもあり、iPhoneやMacなどのアップル製品との相性がとてもいいようだ。それにしても、ワンタッチで完了するペアリングは魅力的だ。その一方で、Androidスマートフォンとのペアリングも試してみたところ、こちらもサクッと画面に表示されペアリングを行うことができた。Androidとの親和性も保たれているので安心して使用できる。

ペアリングの表示例(iPhoneの場合)
ペアリングの表示例(Androidの場合)

スマートフォンから曲を再生した第一印象は、低音と高音のバランスが取れたクリアな音質。サウンドは全体にバランスが取れており、かなりイイ感じがする。低音を再生するウーファーの駆動力が28%、動かせる空気量が90%増加(Beats Pill + 比)しているので、低音域はパワフルではあるものの、サウンドには厚みが加えられ、中高音域もクリアに再生されている。いい意味で想像を超えたサウンドに不意を突かれた感じだ。

ツイーターユニット(左側)とレーストラックウーファーと呼ばれる、サブウーファーユニット(右側)

クラシックの定番ともいえるオーケストラサウンドは、ツイーターユニットが高音と中音をコントロールしながら、それぞれの楽器をクリアなサウンドで再生している。また、EDMをはじめとする速いテンポのダンスミュージック系はもちろんのこと、ボーカルにもキレが感じられ、高音域の伸びも心地よい。ロックやポップス系との相性もよく、心地のよい低音域と共に、サウンド全体に厚みを加えながらスピーカーを鳴らしている。その傾向は、しっとりとしたバラード系のサウンドなどでも同様だった。

大きめの音量で音楽を再生しても、音割れすることもなく再生をしてくれるので、心地よく音楽を味わうことができる。出力されるサウンドからは、ひとつひとつの音のキレと余裕が感じられ、低音域を強調する再生にフォーカスしたスピーカーではないことが伝わってくる。さすがは"Beats"、サウンドエンジニアが考慮して作られているだけのことはある。気持ちよく鳴ってくれるスピーカーだと感じた。

専用ハウジングに固定して収められるツイーター
外周部にはリブが設けられ、コーン部には独自のパターンが刻まれる

チルト角20度のメリット

「Beats Pill」の特徴として、スピーカーユニットに20度のチルト角が設定されていることが挙げられる。本製品は、開発当初からリスニングポジションを意識して開発されてきており、反響音を軽減させたクリアなサウンドだけを聴く人の耳に届けられるように考えられている。

実際にスピーカーをデスク上に少し離して設置し、音楽を再生してみたが、音がこもることなくクリアなサウンドが向かってくるように感じることができた。改めて「Beats Pill」は、どこに置いても安定した音質でサウンドを楽しむことができることを実感した。なお、スピーカー裏面には滑りにくいシリコン素材が使用され、振動などで本体がブレないよう工夫もなされている点も見逃せない。

通話機能にも対応

「Beats Pill」は、通話機能にも対応しているので、スピーカーフォンとして使用することが可能だ。ペアリングしたスマートフォンの着信に、センターボタンで反応すれば通話を開始することができる。
実際に使用してみたところ、違和感なく通話が行えた。「Beats Pill」に向かって発話すれば、スピーカー周辺のノイズを抑えながら、よりクリアな声で通話ができる。スピーカーから聞こえる発話者の声もクリアで、声の通りもよかった。ワイヤレス・ポータブルスピーカーをスピーカーフォンとして使用できるのは便利だと感じた。

2台の「Beats Pill」で、できること

ストラップを活用して、吊すスタイルで設置してみた

もう一台の「Beats Pill」を追加して、2台の「Beats Pill」を組み合わせた同期再生にもチャレンジしてみた。
本製品は2台のスピーカーを同期させることで、同時に音楽を再生する「サウンド増幅モード」と、2台のスピーカー間でオーディオを分割し、1台を左専用、もう1台を右専用にして立体感あるサウンドを楽しめる「ステレオモード」の2種類が用意されている。

それぞれの「Beats Pill」の電源が入っているのを確認し、各スピーカーの電源ボタンの横にあるライトが青くなるまで、各スピーカーのセンターボタンを5秒間押し続けることで、同期再生の準備は完了だ。
モードの切り替えは、「センターボタン+音量UPボタン」で行うことが可能だ。なお、設定したモードは電源をOFFにするとリセットされるので、その都度再設定する必要がある。

「サウンド増幅モード」の使い方としては、手元にスピーカーを置いて音楽を再生しながら、もう1台を離れた場所に設置して同じサウンドを楽しむ、といった使い方になる。離れた部屋にスピーカーを置いておけば、お気に入りのサウンドを共有することが可能だ。例えば、リビングと寝室で同じサウンドを鳴らし、家中を音楽で包み込むようなことができるイメージだ。

一方「ステレオモード」は、パワードスピーカーをワイヤレスで使用しているイメージ。筆者は、たまたま吊すというスタイルで使ってみたのだが、分離されて再生された音像のクリアさと、そのサウンドの良さに驚いた!ステレオ再生の左右分離も申し分なく、ジャズトリオのライブなどは、奏者の位置関係がしっかりとわかる音像空間が再現され、演奏する空間を描きながら聴き入ってしまうほどだった。ワイヤレス・ポータブルスピーカーの特性を生かした新しい楽しみ方となるのかもしれないと感じた。この使い方は、個人的にかなりオススメ。2台用意するのもいいかも!と思ったほど。

ココが惜しい

専用のアプリが、アプリストアにあるかもしれない!と探してみたところ、見つかったアプリは従来の「Beats Pill+」用のアプリ。もちろん、インストールしても使用することはできない。"Beats"のイヤホンによっては、アプリでイコライジングや機能を切り替えたりすることもできるだけに、専用アプリの登場が期待されるところだ。イコライジングが可能になれば、ユーザーが好みに合わせてサウンドをコントロールし、よりパワフルなサウンドを楽しめるはずだ。2台の「Beats Pill」で使用できる「サウンド増幅モード」と、「ステレオモード」の切り替えも行えるようになることにも期待したいところだ。

まとめ

「Beats Pill」は、長時間使用できるバッテリーや、USB Type-Cを接続ケーブルに採用するなど、8年半のブランクを感じさせない仕上がりになっていた。どこでも"Beatsサウンド"を持ち運べることが魅力で、そのサウンドの出力には余裕が感じられ、クラシックからEDMまで、どんなサウンドでも対応することができる。
デザインも"Beats"らしさが表現されており、AndroidユーザーでもiOSユーザーでも違和感なく使用することができるようフレンドリーに設計されていることもオススメのポイントとして挙げておこう。

"Beats"といえば一般的に「低音」というイメージが強いが、「低音」をコントロールするエンジニアリング力が"Beats"の優れているところだと感じた。パワーのある低音だけではなく、心地よい低音を求めるならば「Beats Pill」は、ピッタリのワイヤレス・ポータブルスピーカーになるはずだ。スピーカー選びに迷っているならば、自分のお気に入りの音源を持って、是非、視聴をおすすめしたい。そのサウンドのクオリティに感心するはずだ。

●beats:「Beats Pill」製品紹介ページ

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