[レビュー]「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」を使ってみたら"JETSTREAM"の書き味を"LAMY"のデザイン哲学に融合させた魅力あふれるボールペンだった!

昨年、三菱鉛筆による"LAMY社"の子会社化の発表以来、文具ファンや"LAMY"ユーザーの間で期待が高まっていた"JETSTREAM"搭載のボールペンの登場だが、その期待に応えてまずは"safari(サファリ)ボールペン"が"JETSTREAM"化を遂げた。これまで非公式ではあるものの、"LAMY"ボールペンを互換アダプターなどを使用して"JETSTREAM"化を行っていたファンも多い。「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」は、"LAMY"で"JETSTREAM"インクを使いたいという思いを公式に実現したボールペンだ。以前から"LAMY"ボールペンを愛用する筆者もそんなひとり。今回入手できたこともあり、そのディティールをお伝えしたいと思う。

「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」
左から: ビスタ、ブルー、レッド、アンブラ、イエロー(レギュラーモデル)、ダークダスク、サンセット(期間限定モデル)
LAMYとは
"LAMY"は、1930年にカール・ヨーゼフ・ラミーがドイツのハイデルベルグに創立した会社で同社の万年筆、ローラーボール、ボールペンをはじめとする高品質な筆記具は、タイムレスなデザインとほぼ全ての製造工程をドイツ・ハイデルベルグの自社工場で一貫して行われていることでも知られている。
デザインは、"バウハウス※"の原則「form follows function(形態は機能に従う)」の考え方に基づいて行われており、「筆記具の機能を高め、書くことが楽しくなるデザイン」を掲げている。製品は、さまざまな分野で活躍するデザイナーと同社の技術チームによって生み出され、開発には少なくとも2〜3年の開発期間を費やして行われている。完成した多くの製品は、地域や場所を問わず、時代を超えるロングセラー製品となっており多くの人に愛用され続けている。2024年2月28日、三菱鉛筆による同社の全株式の取得によって連結子会社化され、2025年1月より、日本国内では三菱鉛筆の販売網を通じて販売が行われている。今回発売された「LAMY safari jetstream inside」は両社がはじめてコラボする記念すべき一本となっている。
※1919年に建築家ワルター・グロピウスによってドイツのワイマールに設立されたアートスクール。モダンスタイルデザインの概念を確立し、合理的かつシンプルなデザインを特徴としている。その手法を用いたデザインはいまもなお影響を与え続けている。
"safari"シリーズについて
"safari"は、1980年にプロダクトデザイナー、ウルフギャング・ファビアンによってデザインされた万年筆、ローラーボール、ボールペン、シャープペンシルで構成されているシリーズで「機能美=外観の美しさ」を両立させるデザインが施され、"LAMY"といえば"safari"といわれるほど、知名度と人気の高い定番モデルとなっている。丈夫なABS樹脂製を採用したボディは、握りやすいグリップ形状、大型のワイヤークリップなどの装備が特徴で、人間工学に基づいた、長く愛用できるデザインに仕上げられている。
"LAMY"と"JETSTREAM"の使い心地を確かめる
今回"JETSTREAM"搭載モデルとして発売されたモデルは、LAMYの定番「LAMY safari」シリーズの"safariボールペン"、その名も「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」だ。インクカラーは黒、ボール径は0.7mm(F)が搭載され、本体カラーは、ビスタ、ブルー、レッド、アンブラ、イエローの5色に加え、期間限定で用意されるダークダスク、サンセットを含む全7色展開となっており、価格は3630円(税込)で販売されている。また発売に合わせて、専用の替芯「JETSTREAM替芯 M17」EF(0.5nn)、F(0.7mm)の2種類が用意され、価格はいずれも1100円(税込)となる。
ちなみに、"JETSTREAM替芯 M17"(以下、M17)は、既存のsafariボールペンで使用されている"リフィルM16"(以下、M16)と同形状で互換性が保たれているので、M16を搭載している"safariボールペン"にそのまま入れ替えることでJETSTREAM化することが可能となっている。

全ての筆記具をドイツで作っている"LAMY"だが、本製品もドイツで生産されているようで、軸のパーツには"GERMANY"と刻印がなされている。本体には販売用のシールが貼られており、品番のほか、英語表記による製品名、バーコード、ボール径を表す記号、インクカラーが記されている。これまでの"safariボールペン"では採用されていなかったスタイルとなっているようだ。それとなく販売店で尋ねたところ、「このシールがないとひと目で既存モデルと見分けがつかないので助かる」というようなことも・・・確かに同形状の"safariボールペン"だから、搭載されているインクの見分けがつきにくい。リフィルの品番を確認すればよいのだが、クリアなボディのビスタならともかく、他の軸色の場合は分解して確認しなければわからないので納得といったところ。いずれ海外でも販売されるであろうと予想されるとはいえ、こういった配慮がなされていることが、三菱鉛筆が取り扱いを開始した所以なのかもしれない。




本体スペックは、全長138mm、軸の直径10mm 重量14g。本体は、口金を緩めることで、分解が可能で、口金、リフィル、軸の3つの部品に分解することができる。リフィルの交換はペン先を緩めて簡単に行うことができる。リフィルは、独自規格の形状が採用されており、搭載されるリフィル側面には、「LAMY M17 JETSTREAM」「made in japan」の文字が記載されていることをビスタのクリアなボディ通して確認することができる。手持ちの"M16"を搭載する既存モデルと並べても搭載されているリフィルが異なる以外は、まったく同じだ!過去に購入した"safariボールペン"をリフィルの交換だけで"JETSTREAM"仕様にアップデートすることが可能となっているのはうれしいところだ。

気になる書き心地は?
握り心地は、人間工学に基づいてデザインされたグリップということもあり、握りやすく良好。利き手を問わず指で軸をつかむようにデザインされているのでしっかりと指先でホールドすることができる。優れた握り心地を実現しているということと太すぎず細すぎないグリップもあって、長時間使用しても指先がズレることなく、快適に使用することができる。ふだん細めのグリップを愛用している人であれば少し違和感を感じるやもしれないが、筆記具を握っている感覚を味わえる絶妙なバランスになっているともいえるところだ。
ノック感は、一般的な国産ボールペンと比べて重く、ズッシリとした手応えを感じる押し心地が特徴的だ。独特のガシっという低めのノック音が響くと共に、押し込む動作を行っていることを意識させてくれる仕様がなんとも心地がよい。


書き心地は当然ながら、"JETSTREAM"そのもの!ペン先もブレることなく思い通りに筆記することを可能にしてくれる。インクのフローもスムーズで、紙質を問わずサラサラと滑らかな書き心地でストレスを感じることなくペンを滑らせることができる。黒インクの発色もこれまでの"safariボールペン"と比較して、黒の濃度がアップしているので、"JETSTREAMインク"で筆記していることを実感できる。既存の"JETSTREAM"の書き味が好みのユーザーであれば間違いなく気に入るはずだ。

参考のために記しておくと、既存モデルで採用されている"M16"インクは、「mode in germany」。書き出しのインクフローは鈍いものの、書き始めると粘りのある書き味でスラスラと筆記できる仕様となっている印象だ。このインクの書き味が好みというユーザーも多く、あえていうならば細かな文字を書くなら"M17"、ゆったりと文字を書くなら"M16"が向いているのかな、といったところ。


試し書きに使用した"M16"は、M(0.56mm)
"safariローラーボール"も"JETSTREAM"化できる!?
結論からいうと不可。残念ながら"M17"は、"safariローラーボール"などで採用されている"M63"リフィルとは互換性がないので対応していないということになる。"safariローラーボール"も愛用者が多いだけに、"JETSTREAM INSIDE"が実現すればビッグNEWSになるのは間違いないはず、ぜひリフィルの充実も実現してほしいところだ。

ここが残念!
もちろんLAMYが"JETSTREAM"化されたことは歓迎すべき点だが、やはり、気になるのは、交換リフィル"M17"の価格だ。"safariボールペン"を"JETSTREAM"感覚で使えることを考えれば決して高価ではないとはいえ、日常のランニングコストとしては「少々高めかな」といわざるを得ない。"JETSTREAM"を搭載した高品質ボールペンが数百円で入手できることからすると、仕方がないといえばそうなのだが・・・。やはり、価格はリフィル"M16"の価格程度に抑えて欲しかったという点を挙げておきたい。また、赤や青などのインク色の充実やオリジナルのインク色の登場などにも期待したいところだ。
まとめ:"LAMY×JETSTREAM"はボールペンの理想的な組み合わせ!
「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」は、店頭でも人気があるようで、手にとって試し書きを行う姿を幾度となく見かけてきた。"LAMY"と"JETSTREAM"の組み合わせは話題性もあり、興味のある人は多いようだ。握りやすいグリップをはじめ、細部にまでわたり機能性が考慮されたデザインが施された"safariボールペン"に、"JETSTREAM"ならではのスムーズな書き心地を実現した本製品は、"LAMY"ボールペンの新たな時代の幕開けを感じさせる価値ある一本で、長きにわたり相棒としてつきあえるボールペンとなっている。店舗では、人気のあるカラーは、すでに品切れしていることも多く、すぐには入手することができないかもしれないが、期間限定で販売されているカラーを除けば、いずれ入手しやすくなるはずだ。本モデルの最大の魅力は、国産筆記具では味わえない使い心地を、"JETSTREAM"の書き心地で体験させてくれる点にある。「"safariボールペン"の完成したデザインで"JETSTREAMインク"を使ってみたい」という願いをかなえ、より魅力的で進化が感じられるボールペンに仕上がっているといえるだろう。
●LAMY「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」公式サイト