〈レビュー〉オープンイヤー型なのに、音漏れが気にならない! 耳元でBGMが流れているかのような程よさが心地いい
今回レビューしたのは、NTTソノリティから、2023年4月に発売されたワイヤレスモデルのオープンイヤー型イヤホン。ここ1、2年でいろいろなモデルが発売されたオープンイヤー型イヤホンは、耳をふさがないため周囲の音が聴こえながら、音楽も楽しめるとあって、かなり浸透してきていると感じる。一方で、オープンイヤー型ゆえの問題点もいろいろとあり、例えば、サウンドクオリティがそれほど高くなかったり、音漏れが気になるなどが挙げられる。しかし、最近のモデルは、ただ耳をふさがないイヤホンというだけではなく、サウンドクオリティや、音漏れなどにも配慮したモデルが登場するなど、技術の進化には、目を見張るものがある。今回使ってみたのは、そんなオープンイヤー型イヤホンの中でも音漏れを最小限に抑えたことで、場所を選ばず使用できるというのが特徴のモデルだ。実際、1ヶ月ほど使ってみてたので、サウンド面や音漏れについてなど、使用感も含めてお伝えできればと思う。それでは、本編をどうぞ!
NTTソノリティについて
NTTソノリティは、最先端の音響信号処理技術を用いて音響関連事業を行う企業として2021年に設立された。NTTの特許技術である音漏れを抑制する「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)技術」と、必要な音だけクリアに取り出す「Magic Focus Voice」を組み合わせながら、ビジネスやプライベートなどのさまざまなシーンにおいて、快適な音響空間を実現する製品やサービスを提供している。没入ではなく「共存(Co-being)」をコンセプトとした、NTTグループ初の音響ブランド「nwm(ヌーム)」を立ち上げ、展開をしている。
「nwm(ヌーム)」そして「耳スピ」について
「nwm(ヌーム)」は独自のPSZ技術をコアにしたコンシューマー向け製品を展開する音響ブランドで、追求したのは、没入感ではなく、みんなとつながる気持ちよさ。耳をふさがない、そして音漏れも気にならない、まるでスピーカーが耳元にあるかのような新感覚のイヤホンとして、「耳スピ」シリーズをラインアップしており、この「耳スピ」シリーズにPSZ技術を搭載する。大好きな音も、大切な音ともつながれる「nwm」の「耳スピ」シリーズには、完全ワイヤレスモデルとネックバンド型、有線モデルをラインアップしている。
今回試した製品について
今回試した製品は、「nwm」ブランドの「オープンイヤー型完全ワイヤレス 耳スピーカー nwm MBE001」というモデル。完全ワイヤレスのオープンイヤー型イヤホンで、PSZ技術を搭載したモデル。最大の特徴は、オープンイヤー型なのに、PSZ技術の搭載により音漏れを最小限に抑えているということ。音漏れを抑えることで、自宅以外、オフィスやカフェなどでも気兼ねなく使えるというのがポイントのモデルだ。
オープンイヤー型といえば、耳をふさがない分、どうしても音漏れが気になってしまうことも。耳への負担が少ないのはいいのだが、オフィスやカフェで使おうとすると、音が漏れているのではないかと不安になり、使用するのを控えてしまうケースも。そんな不安を一掃してくれるのが、本製品に搭載されているPSZ技術だ。
PSZ技術とは
そもそも、このPSZ技術とは、どんな技術なのだろうか。PSZは、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所で開発されたNTT独自の技術で、Personalized Sound Zone(パーソラナライズドサウンドゾーン)の略称。どんなものなのかを簡単に説明すると、聞きたい人だけに音を届けるスピーカー再生技術ということになる。この技術の最大の特徴は、聞きたい音はしっかりと聞けながら、音漏れを最小限に抑えつつ、聞きたくない音は、遮断することができるというもの。
もう少し踏み込んだ説明をすると、周囲への音漏れを抑えるために逆位相を活用するという発想から誕生した技術で、正相に対し逆相を重ねることで音の打ち消し合いを起こさせているというのだ。音の出ているスピーカー付近では、正相と逆相が重なり合わないため、音の打ち消し合いが起こらず音が聞こえるのだが、スピーカーから離れるにつれて、正相と逆相が重なり合うことによる打ち消し合いが生じ音の発生を抑えているのだ。
製品の仕様
本製品は、完全ワイヤレスタイプのオープンイヤー型イヤホンで、直径12mmのドライバーを搭載しており、耳元でBGMが流れているかのような自然なサウンドを奏でてくれる。専用アプリ「nwm Connect」を使えば、製品のプリセットやイコライジング設定ができるうえ、本体のソフトウェアのアップデート、ボタン操作の確認もできる。
搭載するBluetoothのバージョンは5.2で、対応コーデックは、SBC、AAC、aptXに対応する。バッテリーの持続時間は、音楽再生時で最大6時間、充電にかかる時間は、約2.5時間となっている。なお、キャリングケースにはバッテリーを搭載していないので、ケース単体での充電は対応していない。IPX2相当の防滴性能を備えているので、屋外で、ちょっと雨に当たる程度なら問題なく使用可能だ。
製品について一通り説明したところで、次は、実際に使ってみた感想をお伝えしていこう。
実際に使ってみた
パッケージを開けて、実際に装着してみる
再生紙を利用して作られたパッケージを開けてみると、黒いペンケースのような横長のケースが現れる。そのケースの中に本体が入っているのだが、取り出してみると、しっかりとした重さを感じる。同梱されているものは、本体、ケース、充電用USBケーブル(Type-c)1本、取り扱い説明書2部(言語が異なるもの)、操作説明とQRコードが記されたペラの用紙と割とシンプルな内容だ。イヤホンと違い、イヤーピースなるものは存在しない。
実機を取り出して装着してみると、片側約9.5gの重さは、一般的なワイヤレスイヤホンが約6g(片側)程度と言われている中において、少々重さを感じるかと思いきや、まったくもってそんなネガティブな印象は受けない。むしろ、着けているのを忘れてしまうかのような軽いモデルよりも、しっかりとした着け心地により、落としてしまう不安感から解放される、そんな印象を受けた。
製品は、耳掛けタイプのイヤホン形状になっており、耳への装着はいたって簡単だ。この手の耳掛けタイプの中には、装着に迷う製品もあったりするが、この製品に関しては、まったく迷うことなく装着することができ、とても好感が持てる。
使用にあたり、スマホと接続する
ワイヤレスイヤホンなので、まずは、手持ちのスマホとBluetooth接続をする必要があるのだが、スマホの設定画面からBluetoothペア設定を開き、新しいデバイスとペア設定を選ぶ。すると、すぐに本機と思われる製品名が現れるので、タッチしてペアリングをする。これで、ひとまず音を出せるようになる。この辺りは、他のワイヤレスイヤホンと同じで、特に難しいことはない。ワイヤードモデルと比べると、この辺りの設定が面倒だと思う方もおられるかもしれないが、一旦ペアリングを行えば、、次からは本機を起動させるだけで、自動で繋がるようになるので、まずは、サクッと設定を済ませてしまおう。
ペアリングが完了したら、次は、アプリのダウンロード行ってみる。本製品に同梱されているモノの中にQRコードが記された用紙があるので、そのQRコードを、スマホで読み込む。すると専用アプリの「nwm Connect」が表示されるので、インストールをセレクトし、スマホに設定する。インストールが終了したら、アプリを開いて、設定を行うのだが、アプリを使うことで、本機の性能をよりパワーアップして使用することができるため、この辺りは、面倒くさがらずに行った方がよいだろう。
アプリを使って音質の設定を行ってみる
アプリを開くと、「はじめる」という画面が現れるので、クリックをする。すると、使用するデバイスを聞かれるので、使用しているデバイスをセレクトしたら、次に進む。すると、スマホとの設定方法、耳への装着確認、本機のバッテリー残量などが確認できるようになる。また、ボタン操作についても、説明があるので、いちいち、取り扱い説明書を持ち歩かなくても、アプリから確認することが可能だ。
サウンド設定も行えるのだが、ここでは、イコライジングのほか、ノイズの抑制、セーフティサウンドの設定が行える。イコライジングは、デフォルトで「バランス」「低音強調」「高音強調」「音声」「ダイナミック」の5つのモードが用意されており、その中からセレクトすることになる。ちなみに、自分自身でイコライジングの調整をすることはできないようだ。ただ、音楽をしっかりと楽しめるように、低音・高音強調・ダイナミックのモードが用意されているうえ、ニュースやドラマ、電話や会議などでの使用に便利な「音声」モードも用意されているなど、おさえるべき箇所はしっかりと抑えているㇽようだ。実際にそれぞれのモードを試してみると、違いは、ハッキリと分かるので、使用する際に設定を変更して使用した方が、より本機の良さが実感できるはずだ。
電話応答にも対応しているから、着信があったら、左右どちらかの本体下部にあるボタンを1回押すと受電でき、2回押すと電話を終了させることができる。ちなみに、LINE電話の場合は、LINE画面の応答をタッチすれば、会話をすることができる。屋外でも試してみたが、相手の声は、ハッキリと聞き取ることができる。ただ、雑踏や風の強い日だと、そのノイズが入ってしまうようだ。その辺りは、同社の新しい特許技術の「Magic Focus Voice」技術が搭載されれば、解決されそうだが、今後に期待したいところだ。
楽曲をガッツリ楽しむというよりは、BGMを流し聴きするといった感じ
人の声を聞き取るということにおいては、とてもクリアにハッキリと聞き取ることができる一方で、楽曲をしっかり楽しめるか、と言われると、その点については、音楽プレーを楽しめるイヤホンに軍配が上がる。例えば、アプリで「低音強調」をセットしたとしても、低音の効いた楽曲のいわゆるズンドコとした迫力ある音を楽しむには、少し物足りない印象を受ける。ただ、BGM的な感じで音楽を流し聴きしたいということであれば、とても心地よい丁度良いサウンドが楽しめる。ガッツリ音楽を楽しめるイヤホンを使うと、耳が疲れてしまったりもするが、本機にいたっては、そのようなことがないので、耳にも優しいと言えるだろう。この辺りは「耳スピ」シリーズの特徴ともいえるのかもしれない。耳の辺りにスピーカーが設置されているかのような感じでサウンドを楽しむことができる。
音量をあまり上げずに使うのがオススメ
本機を使い始めた当初は、他社のオープンイヤー型イヤホンのように、サウンドをしっかり楽しめるモノだとばかり思い、音量を上げて使用していたのだが、ふとある時音量を下げて聴いてみると、とても心地よく音楽を聴けることに気が付いた。特にジャズやクラシックなどの楽曲を、音量を下げて聴いてみると、まるでカフェにでも居るかのような印象で楽曲を楽しむことができた。オープンイヤー型ゆえ、日中に聴く場合は、生活音も入ってくるし、自分のキーボードの打ち込む音も聞こえてしまうわけで、かえってそれらの雑音があることで、聴いている楽曲がBGM的な感じで心地よく聴き流せていたのかもしれない。意外な発見だったが、これはこれでアリだと感じた。音量レベル的には、10段階あるとすれば、2~3段階辺りが心地よいと個人的には思う。
電話の応答
BGM的な使い方で心地よく使用していると、時折、電話がかかってくることもあり、受電するのだが、相手の声は、とてもクリアに聞こえる。ふと、自分の声が相手にはどう聞こえているのかが気になり、テスト的に同じような状況を作り出して、通話相手に私の声がどのように聞こえていたのかを聞いてみたところ、クリアに聞こえたとのことだった。
今度は、少々意地悪な使い方をして、屋外で通話を試してみる。こちらから電話をすると、相手の声は、屋外でもハッキリとクリアに聞こえる。オープン型の場合、屋外に持ち出すと、聞こえにくいといったこともあるのだが、本機の場合、そのようなことはなかった。これは、PSZ技術の恩恵なのだろう。ただ、通話相手には、声はクリアに聞こえるが風切り音が少し気になったらしい。ただ、私の声はクリアに聞こえていたとのことなので、屋外に居ても会話は成立していた。
気になった点
さて、しばらく使ってみて気になるところがいくつかあったので、その点についてお伝えしたいと思う。
まとめ
最近、自宅で作業をすることが多く、あまり人の目を気にすることなく音楽を聴ける環境下になれてしまうと、外出した際に、イヤホンからの音漏れが気になってしまっていた。主にオープンイヤー型イヤホンを使用する私にとって、それは結構切実な問題になっていたのだが、今回使用した「nwm MBE001」はそんな問題を解決してくれる、これまでのオープンイヤー型とは一味も二味も違った製品だった。PSZ技術の搭載により、耳の周りでは音が鳴り、少し離れるだけでその音聴聴こえない。音漏れが気にならなくなることで、オフィスやカフェでも使用できる。また試してはいないが、恐らく電車の中でも使えそうだし、オープンイヤー型イヤホンだから、降車駅もしっかりと聞き取れる。これは、一度使ったら手放せなくなりそうな、そんな製品だった。
今後イヤホンは、単に音声を聞くだけの製品にとどまらず、コロナ禍を経て働き方が変わったように、イヤホンも時代に合わせてどんどん様変わりしていくと思われる。耳をふさがないイヤホンは、まだまだいろいろと進化していくだろうし、進化したアイテムをいろいろと手に取って試してみたいと、改めて思った。
新しい技術に触れるって、楽しいですね~。
※今回試した製品が気になる方は、NTTソノリティの公式サイトでも確認できます。公式サイトはこちらから。