〈レビュー〉ご飯がマジうまいっ!電気でもない、ガスでもない、新聞紙だけで炊いたのに..

2023年10月にタイガー魔法瓶から、新聞紙を燃料としてご飯を炊くことができる「魔法のかまどごはん」という一風変わった製品がweb限定で発売された。一般的にご飯は電気を使用して炊飯器で炊く、あるいはガスを使って土鍋で炊くものだが、「魔法のかまどごはん」は新聞紙を燃やしてご飯を炊くことができるというものだ。新聞紙を燃やすだけで、果たしてご飯を炊くだけの火力を得ることができるのか、とても興味深いところだ。ということで、今回のレビュー記事は、新聞紙の火力で本当においしいご飯が炊けるのかを試してみたので、使用感を交えてお伝えしたいと思う。

目次

タイガー魔法瓶について

まずは、今回の新製品を発売したタイガー魔法瓶という会社についてだが、知らない人はまずいないだろう(と思われる)。そこで、みなさんタイガー魔法瓶と聞いて何を思い浮かべるだろうか。社名に使用されている魔法瓶、それとも炊飯器、あるいは、それ以外の製品。私の場合、炊飯器のイメージがとても強い、それも「炊きたて」という炊飯器のインパクトが非常に大きい会社だ。いまだに私の脳裏に焼き付いているのが「タイガー炊飯ジャー 炊きたて♪」のメロディで、使用されていたCMのメロディが記憶に残っている。さらに記憶をたどるとCMに起用されていたのは女優の古手川裕子さんだったような気がする..。最近では2018年にタレントの佐々木希さんがこのフレーズを口ずさんだCMが印象的だった。タイガー魔法瓶は、2023年2月に創立100周年を迎えた歴史ある会社で、魔法瓶などの真空断熱製品、炊飯器、電気圧力鍋、コーヒーメーカー、オーブントースターなどを世に送り出している老舗のメーカーだ。

今回試す「魔法のかまどごはん」について

早速だが、今回試すことになった「魔法のかまどごはん」について簡単に説明したいと思う。「魔法のかまどごはん」は、新聞紙を燃料にしてご飯を炊くことができるという製品だ。ご飯を炊くときに、最も重要になるのが温度とされている。温度をコントロールすることで、ご飯をおいしく炊き上げることができる。その温度コントロールを新聞紙で行おうというのが今回の製品なのだ。では、なぜこのような製品が誕生したのか、次は企画の背景についてお伝えしよう。

企画の背景

タイガー魔法瓶では、2019年よりすべての製品において「補修用部品の10年間保有」ということに取り組んでいる。これは、生産終了後の製品でも、修理用の部品がないために、修理ができずやむなく手放さなければならないというユーザーの思いを減らしたいということから始まった取り組みだ。しかしそれでも、保有期間を過ぎた部品は廃棄処分となってしまうことから、廃棄処分される部品に心を痛ませている社員も少なくないそうなのだ。そんな廃棄処分されてしまう部品を活用できないものかと考えたのが今回の企画を担当したプロジェクトリーダーの村田氏だ。内なべを使って何かできないかと考えたときにふと思い浮かんだのが、学生時代に「少年自然の家」でアルバイトをしていた際、新聞紙を燃やしてご飯を炊いたことだったそうだ。そこで、同社の「シャイニング制度」(社内でおもいきったチャレンジができる社内公募制度)に応募した結果、通過したため開発に着手したという。

今回の製品を企画したプロジェクトリーダーの村田氏
「魔法のかまどごはん」のセット内容

金型を再利用

同社では、廃棄処分となってしまう保有期間を過ぎた内なべは自治体や青少年団体などBtoB向けに展開しているが、一般消費者向けには、内なべの金型を再利用することで、今回の製品づくりに至っている。金型は、一から作るとかなりの費用がかかると言われており、従来品の金型を使用することでコスト削減に成功している。そのうえ、金型を再利用ということが、SDGsにもつながっており、環境にも優しい製品となっている。

開発には半年という期間を要した

村田氏によると、まず手始めに自宅の庭でバーベキューコンロの上で炊飯器の内なべを載せてご飯をたいてみたそうなのだが、当初は新聞紙のみの火力では不安があったという。そこで断熱性を高めるためにさまざまな工夫を凝らしている。その中で今回の製品に最も近い状態のものとして「かまど」が思い浮かび、それをイメージしながら試作を続けた。70個にも及ぶ試作機を作ったそうなのだが、そのすべてを一人で作成したというのだから驚きだ。

試作機の一部

開発中には、新聞紙が燃え残ってしまい火力が不足することもあったが、左右の2か所に投入口を設け新聞紙を左右交互に入れることで解消させている。さらに投入するタイミングにも着眼。投入するタイミングを変えることで、まるで火力がコントロールされた炊飯器のように最適化できることに成功している。まさに、「はじめチョロチョロなかパッパ」というおいしいご飯を炊きげるための条件とでもいうべき火力コントロールを、火力の弱い新聞紙で可能であることを証明したのだ。こうして完成したのが「魔法のかまどごはん」になる。

随所にみられる工夫の数々

本製品には、新聞紙の弱い火力でも効率よく火を活用するため、新聞紙が完全燃焼するさまざまな工夫が施されている。かまどの底に網状のすのこを敷くことで新聞紙の完全燃焼をサポートしたり、内なべのセットする位置を前方にオフセットして、背面から空気が抜けやすくしていたりなど。また、内なべはかまどから約1/3程度外に出るように設計されており、これにより、内なべの中で温度差が生じるため、対流を引き起こすことを実現している。さらに、セラミック製のかまどは、かまどの上部を内側に巻き込ませることで遠赤外線の過熱効果により炊きムラをなくしている。

空気の抜けをよくするためにうち鍋を前方にオフセットしている
うち鍋を1/3程度かまどから出すことで上下の温度差による対流が生じる
かまどの断面

実際に使ってみる

まずは準備から

ここからは、実際に使用した際に行った準備だったり、炊く作業だったり、炊き上がったご飯を食べてみた感想などをお伝えしていこう。

私、実は料理もできなければ、アウトドアでご飯を炊いたこともない。さすがに炊飯器でご飯を炊いた経験はあるのだが。ということで、至極一般的なことだが使用前に取扱説明書を読むところからスタートした。何が必要なのかをしっかりと確かめたのち、まずは新聞紙(今回は2合炊くので、見開きサイズ7枚と1/2枚)を用意した。次に軍手、点火棒(チャッカマン)、そしてお米、以上で終わり。えっ、これだけなの、と思わず声にだしてしまったが、たったこれだけなのだ。入手しずらい物は何もなく、どこの家庭でもすぐに揃えることができる物ばかりだ。強いて言うならば、点火棒(チャッカマン)はもしかしたら持っていない方もいらっしゃるかもしれないが、これも100均ショップに行けばすぐに入手できるので問題ないと思われる。

新聞紙と軍手そして点火棒を用意。あわせて、新聞紙に火をつけやすくするために折り畳み式のテーブルも用意した

次に、米を洗う。これは、無洗米を使用すれば洗う手間を省くことはできるのでもっと効率的になるはずだが、今回は洗う米しか用意していなかったので、あしからず。使用する合数は2合。よく洗った後は40分以上水につけておく(冬場)。その準備をしている間に、今度は燃料となる新聞紙の準備を進める。今回炊く米の合数は2合なので新聞紙は30ページ分必要とする。次に用意した新聞紙をページごとに分けていく。分けるというのは正しい表現ではないかもしれないので、見開きになっている1枚の新聞紙を半分に裂いていく。半分に裂いた新聞紙を今度は対角線で半分に折り、折った左右の端から内側にクシャクシャっとさせながらねじれた棒状に作っていく。それを一つとして、左右合計で14個、蒸らし用として1個作る。

夏場は30分から2時間程度、冬場は40分から3時間程度水につけておく
投入用として左右に分けておくとわかりやすい

今度は、かまどのセッティングだ。これは、いたって簡単。今回は、作業をしやすくするためにアウトドアで使用できそうな折り畳みのテーブルを用意した。テーブルを組み立てた後に、自宅に転がっていた廃材を敷物として使い、主役のかまどを置く。かまどの中に網状のすのこを敷き、五徳をかまどの溝に合わせて配置する。最後に洗った米の入った鍋をセットし蓋をすればすべての準備は整う。

すのこと五徳をセット
内なべをセット
蓋を置いて準備完了

いよいよ火入れ開始

すべての準備が整ったので、ここからは火入れを行った際の状況をお伝えしよう。先ほど準備の段階で棒状にした新聞紙をまずは右側の投入口に真っ直ぐ差し込み、火をつける。もし消えてしまうようなことがあった場合は再度火をつける。次に1分半経過した時点で今度は左の投入口から棒状にした新聞紙を入れ再び火をつける。この作業を新聞紙を6回目の投入(最初の9分間)まで続ける。6回目の投入が終わったら、7回目からは1分間隔で左右交互に新聞紙を投入し火をつけていく。

最初の1分半間隔で新聞紙に火をつけるというのが、「はじめチョロチョロ」にあたり、次に行った1分間隔で新聞紙に火をつけるのが「なかパッパ」にあたるわけだ。1分間隔で行う際は、確かに前の新聞紙が燃えきっていないうちに次の新聞紙を投入することになるので、火力が弱まることがないのかもしれない。なるほどと感心しながら最後の新聞紙を投入して火をつけたら約10分後に蒸らし用の新聞紙を投入口に入れて火をつける。約5分間蒸らしたら出来上がりだ。

左右の穴から燃えている様子が見れるので自然とテンションが上がる
かまどの背面には空気が逃げやすいように隙間を設けている

蓋を持ち上げ炊き上がったご飯をほぐしたらいよいよ試食タイムだ!

炊き上がったご飯を食べるっ!

白い湯気を上げながら真っ白なご飯が目の前にある。炊飯器で炊き上がったご飯と見た目は変わりないはずなのに、2割増しで美味しそうに見えるのはなぜだろうか。用意したお茶碗に山盛りで盛り付け、早速いただくことに!

炊き上がりのご飯を優しくほぐす
勢いあまって山盛りに盛ってしまった

いやぁ~、これがまずいわけがない。おいしいという言葉以外にみつからない。余計な言葉はいらない、とにかくうまいっ!自分で炊いたということ、外でそれも新聞紙という今までにない方法で炊いたというのが相乗効果となっていることは間違いないのだが、おいしいものはおいしいのだ!これは、2合炊いても一人で全部食べられそうだった。

とはいえ、さすがに準備には妻も携わってくれたので、一人で食べてしまうわけにもいかず、妻とともにいただいた。今回、外でご飯を炊く、ということで頭がいっぱいだったこともあり、ご飯のお供になるおかずになりそうなものを全く用意していなかった。そこで冷蔵庫の中を物色したところ、画にはならないが豚の角煮を見つけたので、2杯目のご飯のお供として豚の角煮をオンしてみた。まぁこれは、いうまでもありません。相性抜群ですから、最高です!

ということで、2合炊いたご飯をわずか10分足らずで食べつくしてしまった。非日常という状況下では恐ろしいほどの食欲を発揮するものだと改めて実感したところで次は片付けに移行する。

使ったものを片付ける

食べ終えた後に待っているのは、そう片付けだ。火を使ってご飯を炊いて、おいしかった!で終わらせたいところだが、片付けがまっている。それも食後の片付けとは違い、食器をあらうだけではないところが、少々気がかりだ。それは火を使ったこともあり、灰で汚れている箇所を掃除するのが大変そうに思えたからだ。

しかし説明書には、食器を洗うようなスポンジで水またはぬるま湯で洗い水ですすぐとある。えっ、鍋、真っ黒ですけど、大丈夫ですか?と思うほど真っ黒になっている。しかし半信半疑でスポンジで洗ってみると、見る見るうちに真っ黒になった鍋がきれいになっていくではないか。ステンレスのシルバーがきれいに顔を出し始めると、がぜん洗うのが楽しくなり始める。力を入れずにスポンジを押し当てるだけできれいになっていくので、とても気持ちがいい。わずか数分で鍋の掃除が終わり、あとは焼いた新聞紙の灰の処分だけだ。

気持ちいいほど簡単にきれいになる
かまどに溜まった灰は、水で湿らせた後、敷いた新聞紙にまとめる

念のため、かまどの底に溜まった灰に少量の水をかけて、完全に鎮火したことを確認したら、新聞紙を敷いてその上でかまどを逆さにし、中の灰を取り除けば灰の処理は終わりだ。新聞紙で包まったらビニール袋に入れて完了。かまどの底を軽く水で洗い流せば、後片付けの完了だ。想像してよりはるかに簡単に終えることができた。

実際に使ってみて感じたこと

今回、初めて新聞紙でご飯を炊いてみたのだが、とても簡単に炊き上げることができた。といっても、説明書通りに新聞紙を投入し火をつけただけなのだが。これなら、火の扱いに慣れていない人でも、それこそ子供でも簡単にご飯が炊けると感じた。

ただ、簡単にご飯が炊けるからという理由で、家の中で使用するのはご法度だ。もちろん、外で使用する際も、住宅街での使用は、ご近所さんには「ちょっと外で調理をするので火を使います」などと断りを入れておくのがいいだろう。炎を扱う以上、細心の注意を払う必要があるのと同時に、周りへの配慮も必要。今回実際に使用して感じたのは、新聞紙を燃やすと少なからずニオイが出てしまう。いわゆるたき火臭とでもいうべきもので、それなりにニオイがする。住宅街で断りなしに行ったとしたら、近所の人が火事だと間違えて、消防署へ連絡をしてしまう可能性もありうる。そんなことになったら大変なので、火を扱う際は近所の方にお知らせしたうえで注意しながら使用してほしい。

今回の製品において"ここは改善してほしい"と感じた箇所は正直なかった。あくまでも個人的な見解になってしまうが、アウトドア経験がほとんどなく、料理も全くできない私が、これほどまで簡単にそして、おいしいご飯を炊くことができたのだ。これだけで大満足。おまけに片付けもラクだし、サイズも邪魔になるような大きさでもない。強いて言えば、陶器のかまどと蓋を守ってくれるケースが付属していたら保管に気を使わなくても良かったかもしれない。

ということで、おすすめ度としては、95点といったところだ。本気でほしくなっている。

まとめ

人生で初?とてもいうべきご飯を屋外で炊いてみたのだが、外で食べるご飯がこんなにもおいしいとは思いもしなかった。アウトドア人気が高い理由が少しだけわかったような気がする。とはいえ、この製品、アウトドアでの使用もさることながら、災害時の備えとして持っているのもよいと思える製品だ。災害時では、ライフラインが遮断されてしまうと、ご飯を炊くことなど到底できない。ましてや火を使ってなど、二次災害を引き起こす可能性もあることからまず無理だと思われる。そんな中、新聞紙でご飯が炊けるのであれば、使用も可能なのではと実際に使用してみて感じた。新聞紙は入手しやすいうえ、火の粉が飛ぶ心配もほとんどない。この製品と、米、新聞紙、そしてライターがあれば、炊きたてのご飯を食べることができる。いつ災害が起こるか誰にも予測ができない中、備えとしてこの製品を持っておくのもいいのかもしれないと、真剣に考えている。

それにしても、炊きたてのご飯、おいしかったぁ~、としみじみしてみる。今度は、カレーを食べてみたいなぁ~、と思ってみる。

最後に、本製品は新聞紙でもご飯が炊けるが、牛乳パックでもご飯がたけるとの記載が説明書にあった。気になる人は、ぜひタイガー魔法瓶のサイトで確認してほしい。なお購入サイトはこちらから

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