「レビュー」リチウムイオンはもう古い!? 半固体電池を搭載したポータブル電源を試してみた(後編)

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早速、使ってみることに!

さてここからは、本製品を実際に使用してみたので、その感想をお伝えしたいと思う。まず、箱から取り出すところからなのだが、半固体電池の採用により、同等の出力を持つ他のモデルと比べてコンパクトさを感じた。とはいえ、高出力モデルなだけにそれなりの大きさではあるが…。本体サイズは、幅270㎜、高さ285㎜、奥行き400㎜で、重さは約21.2㎏とかなりどっしりとしている。本体上部に設置されている手持ち部分に手をかけて持ち上げ、箱から取り出してみたが、女性やお年寄りなど、体力に自信のない人は、2人で取り出した方が無難だと思われる。(参考までに、私は、一般的な体力の持ち主なので、スペックに記載されている数字ほど重さを感じなかった。)

それなりに重さはあるが、持ち運びが大変という重さではない(写真左)/付属するコード類と取扱説明書(写真右)

私自身、過去にいくつものポータブル電源に触れてきたが、確かにそれらのモデルと比べてみても、一回りコンパクトな印象を受けた。このサイズ感で2008Whもの大容量バッテリーを搭載しているとは、少し驚きでもある。なお、本体正面には、LEDライトが搭載されており、ライトボタンを押すことで照明モードを変更・調整することができる。また、SOSを知らせる点滅モードも備わっているなど、突然の停電時や災害時などにも役立たせることができるなど、細かい配慮もされていた。

本体正面には、LEDライトを搭載。ライトボタンを押せば照明モードを変更できる。また、SOSを知らせる点滅モードも用意されている。

使用前に出力ポートの確認

前述した通り、本製品には14もの出力ポートを備えている。使用する前にそれらの出力ポートについて確認してみた。まずは、本体正面(電源ボタンや液晶パネルが設置されている側)に設置されているポートについてだが、USBポートが6つ(USB Type Cポートが3つ、USB Type Aポートが3つ)設けられている。さらに、シガーソケット出力ポートが1つ、DC5.5×2.5出力ポートを2つ装備している。背面には、AC出力ポートが5つ設定されている。

炊飯器を繋いでご飯を炊いてみる

本製品の最大出力は2200Wと高出力を可能にしているから、炊飯器程度なら問題なく使用できるはず。ということで、手始めに炊飯器を本製品に繋いでみることにした。使用方法は、本製品をフル充電状態(100%の状態)にして、その状態からどの程度消費するのかを試してみる。使用した炊飯器は、消費電力1100W程度の一般的な炊飯器で、通常モードをセレクトして3合分を炊いてみることに。炊き上がりまでにかかる時間はおよそ45分だ。

定格出力1100Wの炊飯器を使って3合のお米を炊いてみた

結果から申し上げると、何の問題もなく約45分で3合のご飯が炊けた。当たり前だが、コンセントに刺した状態と何ら変わらず炊き上がるのだが、なぜかポータブル電源を使用して炊き上がったご飯は、いつもと違った光景だったので、テンションが上がる。もしこれがアウトドアならもっとワクワクするのかもしれない。使用後のバッテリー残量は、満充電状態から約11%消費した89%となっており、1100Wの炊飯器を45分使用した場合でも、この程度の消費で済むことがわかった。2008Whの容量はかなりスゴイ。

3合のご飯を時間通りに炊き上げることができた。電力消費は約11%だった

ドライヤーと布団乾燥機を同時使用してみる

次に試したのは、ヘアドライヤーと最新の布団乾燥機(改めてこちらの製品は、レビュー記事としてアップする予定)を同時に使用してみた。ヘアドライヤーの定格消費電力は1200W。一方、布団乾燥機の定格消費電力は420W。トータルでも1620Wだから、本製品の出力パワーからすれば、問題なく稼働するはずだ。使用にあたっては、風呂上りの状態で髪の毛をヘアドライヤーで乾かしている際に、足元が寒いので布団乾燥機をヒーター代わりに使用(同時使用)してどの程度バッテリーを消費するかを試してみた。

ドライヤーと布団乾燥機を同時に使用。合計1620Wもの電力を必要としたが、普通に使用することができた

早速、同時使用を開始させた。両製品とも、最大消費になるモードをセレクトして使用してみた。ヘアドライヤーの使用時間は、私の髪が少々短髪ということもあり、乾かすまでにかかる時間はおよそ5~6分程度。その間、せっかくお風呂に入って足元までぽかぽかになっているので、冷えてしまうのを避けるため布団乾燥機を併せて使用したのだが、これがかなりいい。布団乾燥機は電源ボタンをONにすればすぐに温風が出てくるので、冷えやすい足元に使えば結構暖まれる。湯冷めしなくて済むのがとてもいい。少し話がそれてしまったが、結果を申し上げると、ヘアドライヤーと布団乾燥機の同時使用で1620Wもの消費にもかかわらず、全く問題なく使用することができた。5~6分程度と短時間の使用だったこともあり、1%の消費で残量は99%と消費自体はほとんどなかった。さすが、2008Whもの大容量バッテリーを搭載しているだけあって、安心感がとても高かった。

家庭用コンセントで充電をしてみる

今度は、本製品の充電を試みた。満充電状態から、約50%程度になるまで電力を消費したのち、家庭用のコンセントを使用して充電を試してみた。本製品の入力可能電力は最大1500Wとなっている。50%程度の残量状態から100%の満充電にかかった時間はおよそ90分程度だった。1500Wもの入力ポートを備えているから、充電にかかる時間はかなり短縮されているようだ。これなら、ストレスを感じることなく使用できる。ちなみに、入力ポートはAC入力ポートのほかPVアンダーソン入力ポート(ソーラーパネル及びシガーソケットからの入力)も装備している。

本体背面に設置されているPVアンダーソン入力を使えば、車のシガーソケットからの入力も可能。走行中に本体の充電をすることもできる

ただ少し気になったこともあった。それは、入力を変更させて時間をかけて充電するようなモードが無かったということ。充電池は、半固体電池といえども、急激に充電すれば、バッテリーに少なからずダメージを負わせる可能性がある。そこで、例えば入力を300W、500Wなど低い入力で時間をかけて充電をするモードがあれば、バッテリーへのダメージを少しでも抑えることができると思うのだが…。それでも、3000回繰り返し使用した場合でも、本来の性能の80%を維持することができるうえ、5年もの長期保証も付帯するというのだから、かなり自信のある製品なのだろう。

視認性の高い液晶パネル

本製品の液晶パネルは、他社の製品に比べても視認性がとても高いと感じた。明るい場所でも見えにくくなることがなく、使用中や充電中など、入出力の状態もしっかりと把握することができた。家の中ではもちろんのことながら、屋外での使用で斜めから見た場合でもよく見えるので、情報の把握にとても便利だと思われる。

視認性の高さは、他社も出るよりもかなり高いレベルにあると感じた

急な停電時にも安心のEPS機能も搭載している

ポータブル電源というと、多くの人はキャンプ場など電源のないところで使用するというイメージを持たれていると思うが、私も同様、日常で使用することはあまり想定していなかった。しかし、最近のポータブル電源には、EPSという機能がほぼ搭載されている。本製品にも当然もことながら搭載されている。そもそもEPSとはどんな機能なの?ということでEPS機能について簡単に解説してみたいと思う。EPSとは、Emergency Power Supplyの略で、Emergencyは非常時、Powerは電源、Supplyは電源を意味する。つまり、EPS機能とは、非常時の電源供給機能のことになる。なんだ、非常時にポータブル電源を稼働させて電源を供給するだけなら、電源のない場所で使用する使い方となんら変わらないじゃない、と思ってしまいがちだが、それは違う。

例えば、大きな病院でドクターが患者の手術中に突然停電してしまうようなことがあった場合、命にかかわる事態に陥ってしまうケースも考えられる。病院においてそんなことはあってはならないことなので、あらかじめ非常用電源が用意されており、不測の事態にもすぐに対応できるような設備を備えている。それと同じで、一般家庭においても、仮に在宅勤務中に停電が発生してしまったとしたら、パソコンで作業していたデータが停電によって飛んでしまうことも考えられる。そのようなことを避けるための設備としてポータブル電源があり、EPS機能が存在する。使い方は、本製品をACコンセントに差した状態にしておき、パソコンを本製品から給電するだけでよい。これによって万が一の場合でも、瞬時にパソコンに電源を供給するように切り替えてくれるから、台風が発生しやすい夏や秋など、不測の事態の備えとして、EPS機能を備えたポータブル電源を常設しておくととても安心なのだ。

気になったところ

さてここでは、これまでの使用で少し気になったところをお伝えしていきたいいと思う。私自身、決してアウトドアを積極的に楽しむというタイプの者ではないため、数多くのポータブル電源を試してきたわけではないのだが、そんな私でも気になった点が2つあった。

1つ目は、充電している際に出る作動音(本体内に設置されているファンが回転する音)が結構大きいということ。出力時は、とても静かなのだが、ACコンセント入力時は、ファンが勢いよく回り始めるので、最初は少し驚いてしまった。ただ常にファンが回り続けているわけではなく、時折、ファンが勢いよく回りだすため、家の中だと結構びっくりしてしまう。

2点目は、スマホアプリで本体の状態確認ができないこと。他社製品では、アプリが用意されており、スマホで本体の状態(残量などの確認)を確認したり、入力時の電力をコントロールしたりすることができるモデルが多い中、本製品では、スマホをリンクさせることができない。この辺りは、今後のモデルで対応(アプリを導入)してほしいところだ。

とはいえ、コンパクトなサイズにもかかわらず、このパワフルさはかなり魅力的だ。ソーラーパネルを使用しての充電は試せていないので、そのあたりのパフォーマンスも今後試してみたいところだが、今話題の半固体電池を使用したポータブル電源とあって、かなり頼もしい存在に思えた。一家に一台、緊急事態の備えとして持っているといいかもしれない。価格は、少し高いようにも思うが、安心と安全を買うと考えれば、お買い得だろう。

個人的には、パッと購入できる値段ではないし、気になる点が2点ほどあったので、おすすめ度としては、88点といったところ。アウトドアや緊急時だけに使用するのはもったいないので、常設にして使ってみたい。

写真は、CIGS系電池モジュールを用いたソーラーパネル(BougeRV Yuma CIGS系ソーラーパネル 200W・別売)。単結晶シリコンソーラー電池モジュールに比べて効率的な出力を可能としており、本体の厚みが薄いため柔軟性に優れており、壊れにくく耐久性に優れているという特徴をもつ。

まとめ

トヨタ自動車が全固体電池の実用化に向けて出光興産とタッグを組んで量産化に向けて動き始めている。また、リチウムイオン電池の開発に力を注いできたパナソニックも全固体電池を量産する方針を発表した。これまで、リチウムイオン電池使用の車をはじめ、ポータブルバッテリーは、全固体電池、あるいは半固体電池へとシフトする動きが活発化してきている。その理由は、安全性の高さそして、繰り返し使用できる電池寿命高さなどがあげられる。ニッケル水素電池やニッカド電池などと比べて小型化や長寿命化を可能としてきたリチウムイオン電池も温度上昇による発火事故が発生しており、その安全性が問われている。電解液を使用している電池は、衝撃や熱に弱いということもあり、リチウムイオン電池の例外ではないようだ。

今回、初めて半固体電池のポータブル電源を使用してみたが、使い勝手自体は液体電池を使用しているモデルと何ら変わりはないが、半固体電池は、安全性に優れているというだけで、安心して使用することができる。車に持ち込んで熱い車内に置きっぱなしにしたとしても発火のリスクが低いというのは、それだけでもセレクトする価値があるように思える。また、本製品は繰り返しの使用が3000回以上(80%維持)も可能で5年保証が付いてくるというのだから、最初の一台にベストといえるモデルかもしれない。今後、半固体電池が普及することで、手に取りやすい価格帯になれば、非常時用に備えとして本気で導入を考えたいそんな製品だった。

前編を読みたい方はこちから

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