【レビュー】サイフォン式コーヒーメーカーを使ってみたら 味よし、見た目よし、これはいいぞっ!

今回試してみたのは、昨年タイガー魔法瓶から発売された自動サイフォン式コーヒー抽出システムを搭載したコーヒーメーカー「Siphonysta(サイフォニスタ)ADS-A020」というモデル。サイフォン式というと、まるで理科の実験をしているかのようにコーヒーを淹れるという印象があるのだが、今回試した製品は、もっと手軽にしかし本格的なコーヒーを楽しめる製品とあって、前々から気になっていた製品だ。たまたま試す機会を得たので、製品の紹介と実際に使用してみて感想をお伝えできればと思う。はたして、初めて体験するサイフォン式コーヒーメーカーで淹れたコーヒーは、どれほどのものだったのか!とくとご覧あれ。それでは、本編をどうぞ!

目次

タイガー魔法瓶について

今回レビューする製品を発売したタイガー魔法瓶という会社についてだが、以前同サイトで投稿した〈レビュー〉記事があるので一部省略するとして、タイガー魔法瓶と聞いて何を思い浮かべるだろうか。社名に使用されている魔法瓶、それとも炊飯器、あるいは、それ以外の製品。私の場合、炊飯器のイメージがとても強い、それも「炊きたて」という炊飯器のインパクトが非常に大きい。2023年2月に創立100周年を迎えた歴史ある企業で、魔法瓶などの真空断熱製品、炊飯器、電気圧力鍋を得意としている老舗のメーカーだ。

今回試した「Siphonysta(サイフォニスタ)について

本製品は、一般的なドリップ方式ではない浸透式を採用し、シリンダーの上下に圧力差を発生させてコーヒーを減圧ろ過して抽出を行う新しい方式のコーヒーメーカーだ。同社が長年培ってきたスチーム技術と熱制御技術を組み合わせたことで誕生したモデルになる。

そもそもサイフォン式とはどういう物なのか。これは、フラスコに入れた水を沸騰させ、その際に発生する圧力の変化を利用してコーヒーを抽出する方法で、ドリップ式と比べて、蒸らし時間やお湯の注ぎ方による味の変化が少なく、抽出時にコーヒーの香りが強く出るといった特徴がある。一方の容器にはコーヒー粉をセットし、もう一方の容器には水を入れて加熱させる。加熱して沸騰したお湯が、加熱時に生まれた水蒸気によって圧力を生み出し、コーヒー粉の入った容器に沸騰したお湯が移動することで、コーヒーを抽出することができるという仕組み。圧力の変化で熱せられたお湯がもう一つの容器に移動してコーヒーを蒸らし、抽出する一連の流れが、まるで理科の実験を思い起こさせる、そんな雰囲気が楽しめるのも特徴の一つとなっている。

この一連の流れを自動的に行うようにしたのが今回試した「Siphonysta」になる。特徴としては、コーヒーの抽出過程において、温度を切り替えることでコーヒー本来の風味を引き出す「Dual Temp(2段階温度抽出)」機能を搭載しているということ。これにより、雑味を抑えてよりコーヒーの風味を楽しめるようにしている。また、同じ豆から挽いた粉を9通りの方法で抽出することが可能となっているのも注目すべき点だ。本体には、風味と濃さのセレクトができるように選択キーそれぞれ3段階から用意されているので、好みにあった抽出を楽しむことができるという点も見逃せない。

そして、抽出過程も魅力の一つとして挙げられる。上下に設定されたシリンダーに圧力差を発生させることで、コーヒーのろ過と抽出を行う。また、シリンダーとパイプの距離は、噴き上がるコーヒーが最も美しく見える距離に調整されており、魅せる抽出過程にこだわったとしている。見て楽しく、飲んでおいしい、そんな仕様になっている。

実際に使ってみる

さて、一通り製品の説明が終わったところで、実際に使ってみることにした。箱から本体を取り出して、テーブルに本体他、付属品を含むアイテムを並べてみる。本体そのものは、高級感のある見た目とは違って、とても軽く、移動もラクに行えるため、設置が大変だとか、片付けが大変になりそうだどいう印象はない。マットな質感が、存在感を主張していない辺りも、好感が持てる。コーヒーカップを置くスペースはミラーを使用することで、奥行きを感じさせる仕様になっている。

セット内容
完成した状態

説明書を一読して、まずはコーヒーを淹れてみることにした。使い方は、それほど難しくなく、説明書の通りにセットしていけば、ものの数分でコーヒーを淹れる準備が整う。手順は以下の通りだ。

まずは、下のシリンダーにコーヒー粉をセットするため、揚水パイプとフィルター下シリンダーに組み込む(写真①)。組み込みが完了したら、シリンダースタンドに立て(写真②)、付属の計量スプーンで、下のシリンダーに抽出したい量のコーヒー粉を投入する(写真③)。コーヒー粉を投入したら下のシリンダーをジョイントに取り付ける(写真④)

写真①:下シリンダーに揚水パイプとフィルターを組み込む
写真②:シリンダースタンドに立てる
写真③:下のシリンダーに抽出したい量のコーヒー粉を投入する
写真④:下のシリンダーをジョイントに取り付ける

次に上シリンダーに、2杯分の水(約300ml)を入れ、蓋を閉める(写真⑤)上のシリンダーをジョイントに取り付けたら、本体にセットする(写真⑥)。その前に、本体の準備として、トレイとトレイカバーをセットしておく(写真⑦)。後は、コンセントを差し込み、風味と濃さを好みに合わせてセレクト(写真⑧)すれば、全ての準備は整う。

写真⑤:上シリンダーに、2杯分の水(300ml)を入れ、蓋を閉める
写真⑥:上シリンダーをジョイントに取り付けたら本体にセットする
写真⑦:その前に、本体の準備として、トレイとトレイカバーをセットしておく
写真⑧:風味と濃さを好みに合わせてセレクトする

いざ、スタートをさせると、下のシリンダー内に蒸気がたちこめてコーヒー粉の蒸らしが始まる。そしてしばらくすると、上のシリンダーから自動的にお湯が注がれ、コーヒー粉が撹拌される(メニューによっては撹拌されない場合もあり)。しばらくすると、抽出されたコーヒーが、上のシリンダーに噴き出るように溜まり始める。わずかな時間ながら、この一瞬のために、セットしたといっても過言ではない。コーヒーを淹れている最中でも、視覚的に楽しめるのは、この製品の醍醐味で、テンションが上がる瞬間だ。

コーヒー粉の蒸らし中
抽出されたコーヒーは、勢いよく上シリンダーに噴出される

抽出が終わると、終了を知らせるビープ音が鳴り、カップをセットしてレバーを手間に引けば、カップにコーヒーが注がれる。これが、コーヒーを淹れる一連の流れになる。

終了のお知らせがあったら、レバーを手前に引いてコーヒーをカップに注ぐ

抽出にかかった時間は、約8~9分程度

抽出にかかった時間は、準備を含めて約8~9分程度(セットしてからだと約3~4分程度)と、意外にも早く抽出してくれる。初めてのサイフォン式は、思いのほか、簡単に淹れることができた。とはいっても、自動なので、私はコーヒー粉と水のセット、そして風味と濃さのセレクトをしただけなのだが、わずかな手間で、見て楽しめ、飲んでおいしいコーヒが楽しめた。

わが家ではいつもはドリップ式で妻がコーヒーを淹れてくれる。そのため、ドリップ用に挽いた粉を用意しているのだが、今回はあえて豆挽から行ってみた。実際、豆を挽いて、本体に挽いた粉をセットし、水のセット、本体にシリンダーのセットまで行っても、コーヒーの抽出にかかる時間は、約30分程度だった。平日の朝は、さすがにドタバタしているので、そんな時間もないのだが、週末であれば、のんびりと豆挽から行い、シリンダーをセットして抽出するのも、アリだなと感じた。

風味や濃度を変更して抽出してみる

あっけなく抽出ができたので、次は風味を変えて試してみることに。最初は、3段階、中間の風味と濃度で試してみたので、今度は、風味と濃度をマックスにして試してみた。抽出方法は、まったく同じだが、最後の風味と濃度を「Bitter」と「Strong」にセットして抽出を試みた。出来上がったコーヒーを飲んでみると、明らかに味が違う。「Bitter」と「Strong」に設定したこともあり、苦みと濃さをしっかりと堪能できた。ちなみに、風味を「Acidic」側にすると、酸味を楽しむことができる。もちろん、濃さも「Strong」の濃いものと、「Light」の軽い味わいも選べるため、好みやその時の体調によって、選べる辺りも自動式ならではかもしれない。

噴き上がる瞬間

それにしても、噴き上がる瞬間は何度見ても楽しい。上のシリンダーから水が注がれ、下のシリンダーでコポコポと音を立てて撹拌される。その後抽出されたコーヒーが上のシリンダーに噴き上がって溜まるのだが、瞬間的とはいえこの上下の一連の動作をただ眺めているだけで癒される。できることなら、もう少し噴き上げている時間が長かったらと思うほどだ。

一瞬だがこの噴出するタイミングがワクワクする
抽出が終了した状態

フィルターには金属フィルターが採用されている

シリンダーをセットする時に、ふと気が付いたのだが、下のシリンダーにセットするフィルターが金属製を使用していたということだ。確か金属製のフィルターは、紙のフィルターと比べてコーヒーに含まれる油脂や微粉が取り除かれないため、豆本来の味を楽しむことができたはずで、こんなところにもこだわっているのか、と驚いた。この辺りにも開発者のこだわりが感じられる。

かなり目の細かい金属製フィルターを使用している

上下が逆のシリンダー

今回、「サイフォニスタ」を使用するにあたり、私なりにいろいろとサイフォン式について調べてみたのだが、調べていく中で、あることに気が付いた。それは、「サイフォニスタ」は一般的なサイフォン式のコーヒーメーカーとシリンダーが逆にあるということだ。アナログモデルも、電気式モデルも、一般的には下のシリンダーで水を沸騰させ、上のシリンダーにコーヒー粉をセットして抽出し、最後に下のシリンダーに抽出されたコーヒーが溜まるという仕組みになっている。しかし「サイフォニスタ」においては、上下が逆になっているのだ。どうやら、逆さにすることで金属フィルターで発生した微粉がコーヒーに入ってこないようにしているらしいのだ。それでいて、コーヒーの油脂はしっかりと上のシリンダーに移動させることができるわけだから、金属製フィルターを使用していることにもうなずける。

後片付けもラク

まったりとコーヒーを飲んだあと、気になるのは片付けだが、せっかくのんびりしているのに、後片付けはやっぱり面倒くさいもの。しかし、そのままにしておくこともできず、重い腰を持ち上げてキッチンで使用後のシリンダーを洗浄する。専用のブラシも用意されており、まずはシリンダーから洗浄を開始した。取り外すパーツは、ドリップ式に比べてしまえば、多いと感じるが、意外にもササっと洗えてしまい、想像していたより簡単にすますことができた。それぞれのパーツを順番に外していき、お湯で優しく洗ってあげればいいだけなのだが、シリンダーが食洗器にも対応しているというあたりは、毎日使う人にとって、うれしいポイントだ。

付属のパイプ洗浄用ブラシで揚水パイプを洗う
同じくパイプ用ブラシで上シリンダーのパイプを洗浄する

なお、本体内部の洗浄については、月一回程度(使用頻度にもよる)コーヒーが流れる経路をお湯ですすいだり、ミネラル成分を取り除くためにクエン酸を使用して洗浄することをオススメしている。

気になった点

実際に使用してみて、趣向性の高い製品だと感じながらも、少し気になった点もあった。

一つは、上下のシリンダーが樹脂製だということ。これは、あえて樹脂製にしているのだとは思うが、全体的に高級感のある作りになっていたので、できればガラス製にしてほしかった。とはいえ、ガラス製にすると、破損などの恐れも出てくるし、なにより、サイフォン式を初めて使う人にとっては、ガラス製はハードルが高いのかもしれない。とはいえ、視覚的にも楽しめる製品なので、この辺りは、オプション設定で、ガラス製のシリンダーをセレクトできたりすると、さらに高級感が増すように感じた。

もう一つは、Start/Stopボタンの節度感が無かったこと。このボタン、静電タッチではなく、物理ボタンなのだが、Startボタンを押しても、押した感が感じられなかった。もしかしたら、デモ機ということもあり、使用頻度によって、新品状態の時とは変わってきているのかもしれないが、それでも、押している感があまり感じられない。カチッと感があるといいと感じた。風味や濃さを調整するボタンはタッチ式にしているのであれば、Start/Stopボタンもタッチ式にしてほしかった。

とはいえ、サイフォン式を初めて使う人にとって、あるいは、コーヒーにこだわりを持っている人など、おいしいコーヒーを飲むことができる、オススメの1台だと言える。仕事で忙しい日々を送っている人も、育児や家事で大変な人も、あるいは、休日をゆったり、のんびり、時間を贅沢に使いたい人にもピッタリなアイテムで、「サイフォニスタ」を使えば、心に少しゆとりが持てるかもしれない。視覚的に楽しめるあの仕掛けは、何度見ても楽しいし、あの湧き上がるコーヒーのように、もうひと頑張りしますかっ!となんだか後押しをされているような頼もしさも感じた、私だけかもしれないが…。そして、隠れたところに、実はいい仕事をしてくれる機能が備わっていて、例えば「Dual Temp」(2段階温度抽出)など、プロレベルの抽出方法を機能として盛り込んできたりと、おいしいコーヒーを淹れるための貪欲さがたまらなく魅力的な製品だ。

まとめ

今回初めてサイフォン式コーヒーメーカーでコーヒーを淹れてみたが、他のサイフォン式の製品も試してみたくなるほど、楽しみながら体験することができた。理科の実験を彷彿とさせるサイフォン式、こだわり始めたら、かなり奥が深そうだ。フラスコとアルコールバーナーを使用する本格的なサイフォン式でコーヒーを淹れてみるというのも面白いかもしれない。ドリップ式一辺倒の我が家にとって、サイフォン式は新鮮で、なにより視覚的にも楽しみながらコーヒーを飲むことができたのは、コーヒー好きにとって、最高なひと時を過ごすことができたといえる。

今は、なかなかコーヒーを楽しむだけの余裕もゆとりもないが、いつの日かのんびり何物にもとらわれることなく、おいしいコーヒーを飲んでみたいと本気で思ってしまった。そんなことを思わせてくれた「サイフォニスタ」に感謝をしつつ、今回のレビュー記事を終わりにしたいと思う。

最後まで読んで頂き、ありがとございました。タイガー魔法瓶の「サイフォニスタ」が気になる方は、こちらからどうぞ!

  • URLをコピーしました!
目次